「三権分立」を尊重したか、再交渉を狙うのか

 米国は1992年、親条約への締結を決めた。当時、議会上院による共和党議員も含む大多数の賛成により、親条約締結が可決された。立法を担う連邦議会が批准を可決した国際条約というわけだ。

 そこで仮に、行政トップである大統領の一存で脱退するとしよう。議会の可決を無視して大統領が脱退を進めることは可能なのか。米国内に統一した意見はないとみられるが、「脱退を望まない法学者からも、脱退を止めるのは難しいとの見方が出ている」(上野主任研究員)という。

 加えて将来、温暖化対策に熱心な大統領が米国で誕生し、親条約とパリ協定への復帰を目指すとしよう。「もう一度、上院で親条約への再加入の承認が必要になるのかは分からない。だが、協定脱退論を(トランプ政権に提言するなどして)主導した保守団体は、将来の大統領が再加入する時には上院の承認が必要になると考えているようだ。その場合、上院の議員構成によってはハードルが極めて高くなる」と上野主任研究員は指摘する。

 トランプ大統領は将来も、米国が国際的な温暖化対策の取り組みに復帰しづらくなるほどの“くさび”も打てたわけだ。それでも「親条約脱退」の選択肢を取らないのは、米国の三権分立を尊重したのか、それとも大統領が演説で述べた「米国にとって公平な協定のための再交渉」を本気でするからなのか、それは大統領と側近にしかわからない。

 今後、米国メディアのリーク合戦もあろう。大統領の側近には、親条約の脱退を直言する者もいた。そんな脱退派と、気候変動対策を肯定するレックス・ティラーソン米国務長官や長女イバンカ・トランプ氏ら残留派との綱引きがあったかもしれない。

 ちなみに3つ目の選択肢は、パリ協定への批准の是非を、改めて連邦議会に諮る方法だ。この方法はまだ、トランプ側近らの選択肢として残っているとみられる。親条約には残留するものの、この方法が採られた場合も、米国のパリ協定への復帰が遠のく可能性が残っている。