回避された「extreme」な選択肢

 演説の翌日2日、スコット・プルイット環境保護庁長官はホワイトハウスで、「(パリ協定の)脱退の仕方を司法省で議論している。数週間で結論が出るだろう」と記者団に説明。また同時に「我々は(パリ協定の親条約である)気候変動枠組み条約の(締約国の)一員である。これからも関与し続ける」とも話している。

 この説明から分かるのは、トランプ大統領の脱退策は、「穏便」な方法が取られるもようということだ。
 専門家はもっと致命的な脱退策が取られることも危惧していた。その策とは、将来、政権が交代して米国が国際的な温暖化対策に復帰しようとしても、ほとんど復帰できないかもしれない選択肢だった。

 それはパリ協定の親条約、「気候変動枠組み条約」からの脱退だった。世界の温暖化政策に詳しい上野貴弘・電力中央研究所主任研究員は、「脱退の仕方は確定していないが、トランプ氏が親条約から脱退すれば、次の大統領が温暖化対策にどれだけ積極的であろうと、米国の復帰が相当に難しくなった可能性があった」と話す。

 米国メディアも、演説前に「親条約からの脱退」の可能性を示唆し、「extreme(極端)」な選択肢だと指摘していた。米国の「三権分立」を脅かしかねないからだ。

 パリ協定脱退に踏み切るに当たり、トランプ大統領には3つの選択肢があったとみられる。1つ目は「パリ協定だけを脱退」、2つ目は「親条約からの脱退」。「気候変動枠組み条約」を脱退することで、パリ協定も自動的に脱退できるわけだ。3つ目はパリ協定の批准を決めたオバマ前大統領の手続きを否定し「手続きをやり直す」という選択肢だ。

 1つ目の選択肢なら、米国が正式にパリ協定を脱退できるのは早くても2020年11月になる。2つ目の選択肢を取って親条約を脱退するなら、国連に通告してから1年で脱退となる。早ければ2018年半ごろだった。

 しかし今回は、プルイット長官の「親条約の一員である」との説明から、2つ目の選択肢は却下されるもようだ。大統領が演説でまくしたてるほど「パリ協定憎し」なら、より早く脱退する方法を取ればいいのに、だ。なぜか。