6月1日、パリ協定からの脱退を表明したトランプ米大統領(写真:ロイター/アフロ)

 米国のトランプ大統領は6月1日午後3時(日本は同2日午前4時)、ホワイトハウス中庭で演説し「パリ協定」からの脱退を明らかにした。演説を受けて国内外で「パリ協定の取り決めにより、米国の脱退は2020年11月から」と報道されている。大統領府スタッフが「脱退に4年かかる」と連邦議会に説明したとの報道もある。

 ただ、「米国がパリ協定をいつ脱退するか」は確定していないもようだ。実は、もっと早くパリ協定から脱する「最悪の」選択肢もあった。「最悪シナリオ」が選ばれていれば、米国はトランプの次にどれだけグリーン(温暖化対策に積極的)な大統領に交代しようとも国際的な温暖化対策に復帰できない時代が続く。これには後ほど触れたい。

 さて、大統領は演説で「パリ協定は非常に不公平」と強調し、「パリ協定憎し」の思いをぶちまけた。「協定は財政的、経済的な負担配分を課している」「温室効果ガスの削減目標と、(途上国向け温暖化対策支援のための)緑の気候基金への巨額の拠出を取りやめる」と気を吐き、パリ協定の枠組みを一蹴してみせた。   

 また、「中国は何百もの石炭火力プラントの新設を許可するだろうが、米国はできない。パリ協定が原因だ」「インドは石炭生産量を倍増する。欧州でも石炭火力プラント建設が続く」とも話し、オバマ前政権がパリ協定参加とともに進めた、火力発電に対するCO2排出規制から石炭産業を保護する意欲をにじませた。

 一方で、「米国とそのビジネスと労働者、納税者らに公平な、まったく新しい条約なら交渉を始めて再加入もある」と話した。

 200近い国・地域が、長年にわたる膨大な時間を費やし積み重ねた交渉の末、2015年にパリ協定は採択された。排出大国・米国を、14年の歳月を越えて世界の温暖化対策の歩みと協調させるために国際社会が譲歩に譲歩を重ねて仕上げた産物である。トランプ大統領はそんな交渉の経緯を一蹴し、再交渉を求める構えをちらつかせた。

 とはいえ、「パリ協定の何に対する再交渉が必要なのか」は演説ではさほど明らかにならなかった。途上国向け基金への巨額拠出や、オバマ前政権が掲げた温室効果ガスの削減目標やCO2規制が不満ならば、パリ協定に残留しても修正できる。国連のほか、ドイツやフランス、イタリアのトップは「パリ協定は再交渉できない」と、トランプ氏の提案を突っぱねる声明を発表している。