「お天気任せ」から脱却

 これまでなかなか進まなかった「食品ロス」の削減にもAIが威力を発揮し始めている。食品ロスは、本来食べられるはずなのに廃棄された食品のこと。世界では毎年約13億tの食品ロスが発生しており、社会問題になっている。

 日本気象協会(東京都豊島区)は3月に、企業が生産・販売する商品の需要を予測する専門部署を立ち上げた。AIを活用し、気象データと過去の販売データから最適な需要量をはじき出すサービスである。同社のサービスを活用し、食品ロスの削減に取り組んでいるのが、豆腐メーカーの相模屋食料(前橋市)だ。

日本気象協会が相模屋食料に提供する販売量の予測情報

 豆腐は、賞味期限が短く、在庫の確保が難しい。そのため、品切れを恐れて過大に生産し、大量の食品ロスが発生していた。これまでは、需要予測の担当者が、天気予報を参考にして生産量を決めていた。

 日本気象協会のAIは、寄せ豆腐の売れ行きを示す「寄せ豆腐指数」を弾き出す。相模屋食料はこれらの情報を活用して過剰生産を抑え、廃棄量を約30%削減できた。

 AIの特徴は、温度や湿度といった気象情報だけではなく、「体感気温」を取り入れているところだ。例えば、同じ30℃でも、初夏の30℃は暑さを感じるが、真夏の暑さのピークを過ぎた後の30℃はあまり暑く感じない。そこで、ツイッターでつぶやかれた「暑い」「寒い」などの回数を把握している。こうした人間の「気持ち」をAIに踏まえさせることで、高精度な需要予測を可能にした。

スイッチ操作が10分の1に

 AIを省エネに活用する取り組みも進んでいる。AIによって電力需要を精緻に予測したり、人間の行動を把握・学習して自動的に無駄を排除したりする。

 住宅リフォーム事業などを手掛けるエコライフエンジニアリング(東京都新宿区)は、2017年6月からAIで家を丸ごと制御する「AIスマートホームシステム」の販売を開始する。

エコライフエンジニアリング(東京都新宿区)が提供するAIを活用した住宅

 部屋に設置した各種のセンサーから居住者の行動データを集めてAIが学習し、居住者の行動を予測して照明や空調などを制御する。居住者の音声を学習することも可能で、部屋に設置した音声認識装置に「カーテンを開けてほしい」と言うと、それを理解して自動でカーテンを開けてくれる。

 AIは、米ブレインオブシングス社の技術を採用している。同社は、米スタンフォード大学のAI研究者が起業したベンチャーだ。米国では既に200軒以上の家で導入実績があり、月額50ドルから利用できるメニューを用意している。

 現在、新宿区のマンションの1室でモデルルームを開設しており、希望者は住んでみることもできる。エコライフエンジニアリングの蔵並弘人社長もこの「AIハウス」で1週間過ごしてみた1人だ。その結果、「照明、空調、カーテン、換気扇などのスイッチ操作が激減した」と話す。休日には、1日150回程度のスイッチ操作をしていたが、1週間後には15回程度に減ったという。

 AIを活用した省エネは、清水建設なども取り組んでいる。ビルの省エネを丸ごとAIに任せる試みが進んでいる。