コニカミノルタは、「スコープ3」に相当する調達先の工場でのCO2排出量削減を支援する
コニカミノルタは、「スコープ3」に相当する調達先の工場でのCO2排出量削減を支援する

 ただし、企業はどんな目標でも勝手に決めていいわけではない。「自社の目標はSBTである」とうたうには、一定の条件を満たして「SBTイニシアチブ」の承認を得る必要がある。SBTイニシアチブと呼ばれる組織は、国連グローバルコンパクトと、国際NGOのCDP、世界資源研究所、WWFが創設した。

 既存の目標がSBTの条件を満たしていた企業がある一方、SBTイニシアチブが推奨するツールを使ってSBTを新たに算出したところもある。

 第一三共は、ツールで算出したSBTを採用した。スコープ1と2の排出量を、2030年度までに2015年度比で27%削減する。
 「国際的に長期の温暖化対策や社会課題の解決が求められる中、SBTにのっとった中期目標の設定が必要と判断した」と、谷口修之・CSR部長は話す。

 「スコープ1」はボイラーを燃やすなどの燃料消費や、工場での生産で生じる温室効果ガスの排出量、「スコープ2」は電力会社などから購入した電気や熱を使うことで生じるCO2排出量のことだ。他にもスコープ3があり、サプライチェーンに含まれる調達先の工場や物流などからの排出量を表す。

 コニカミノルタは製品ライフサイクル(スコープ1、2、3)におけるCO2排出量を2030年までに2005年度比で60%削減する。2016年度までに2005年度比で40%削減する目標を掲げており、達成できる見込みのため、2030年までの14年でさらに削減を積み上げる。達成に向けては自社の工場でのいっそうの省エネに加えて、スコープ3に当たる調達先の工場での省エネも進める。

 同社はグループの主要工場に対し、2018年度までにその工場からのCO2排出量の10%に相当する量を、調達先や顧客などの社外で減らすことを求めている。サービス事業として提供するわけではなく、無償での支援だ。工場が培ってきた省エネのノウハウを生かして調達先や顧客の工場などで省エネ診断を行い、CO2排出量の削減につなげる。国内に限らず中国の調達先でも活動を展開している。

 キリングループはスコープ1と2の合計排出量と、スコープ3の排出量をそれぞれ2030年までに2015年比で30%減らす。省エネを徹底する他、東京電力エナジーパートナーが販売する、CO2を排出しない水力発電の電気を使う。他に「グリーン電力証書」「グリーン熱証書」も活用する。再生可能エネルギーで生み出された電気や熱の「環境価値」を証書として取引できる仕組みだ。この証書を使うと、電気や熱を生み出す時にCO2を排出しない再エネを活用したとみなされ、同時にCO2を削減したとみなされる。今後はビール製造工程で排出する大麦の殻などバイオマス(生物資源)の活用も検討する。

 CSV戦略部の是安亘主査は、「年内に目標達成に向けた具体的な対策をまとめる」と話す。

「機関投資家向け企業ランキング」で高得点がほしい

 企業の温暖化対策が進展すれば、達成の難しい2℃目標の実現にも1歩近づくことになる。 

 グローバル大手企業の温暖化対策を評価し、ランキングを発表するCDPが今年から、企業を評価する採点基準に「SBTを設定しているかどうか」を加えたことも、企業に影響を及ぼしている。
 CDPは5600社以上に及ぶグローバル企業の社長宛に、温暖化対策に取り組んでいるかどうかを尋ねる質問状を送る。企業からの回答を基に採点して企業ランキングを発表。企業から得られた情報は、827の世界の機関投資家に開示される。その資産額は100兆ドルに達するという。ここに来てSBTを発表する企業が相次いでいるのは、今年のCDPへの回答期限が迫っているからだ。

 SBTの設定を済ませた企業や、今後設定すると約束している企業の環境・CSR担当者は、「CDPの最高評価であるAを獲得した企業リスト(Aリスト)入りを死守したい」と口をそろえる。ある企業の社長は、欧州での投資家向け説明会で「CDPでの評価が高いことをもっとアピールすべき」と機関投資家から詰め寄られたという。海外の機関投資家に限らず、「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESG投資に乗り出した影響で、他の日本の機関投資家も参照する情報としてCDPの存在感が増している」とある担当者は指摘する。

 ESG投資の拡大を肌で感じている企業ほど、SBTを採用する傾向にあるようだ。