先進国・途上国の差を付ける「自己差異化」

 続いて(4)各国が目標達成に向けて国内措置を実施し、隔年で排出量と吸収量の実績を示す目録やNDCの達成状況を報告。報告を基に、専門家などがレビューしたり、多国間で検討し合ったりする。(5)NDCの実施や報告・レビュー義務などの順守に課題がある場合は、今後新たに作る委員会で取り組みを促す。罰則は設けていない。

実効性強化へ対策促す仕掛け

 すべての国で共通する取り組みと、差を付けた取り組みがある。

 共通しているのは次の2つ。まずはNDCの準備と提出、維持、その達成を狙った国内措置の追求が、すべての国に共通する義務となった。

 次に、排出量と吸収量の目録や達成状況の隔年報告、専門家レビューや多国間での検討も共通義務となる。

 一方、差異化したのは次の通りだ。まずNDCという仕組みにより、目標を「自己差異化」する。つまり、どの国も自国の事情を踏まえて削減目標を作ることで、結果的に各国の事情を反映した差異化に至る。ただし、協定は先進国には総量削減の継続、途上国には経済全体の排出抑制・削減への斬次移行を求めた。加えて途上国は削減するために支援を受けられ、透明性を強化する際にも、柔軟な措置が取られる。

 パリ協定は、NDCの達成を義務付けていない。しかし、NDC策定時には提出時期を世界全体でそろえることで国際的な関心を高め、NDC実施時には各国の達成状況のレビューにより透明性を高めて、国内外で圧力が働くようにし、実効性を担保することを狙っている。

 ただし、透明性強化や世界全体での総括の運用規則は今後の交渉に委ねられており、パリ協定の実効性を左右しそうだ。

本記事は、「日経エコロジー」2016年2月号(1月8日発行)の記事に、その後の動向を踏まえて加筆・修正したものです。