短中期では技術革新を待たず、今利用できる最良の技術(BAT)の途上国移転の加速が求められている。

 日本政府はこれまで、2国間クレジット制度(JCM)を通じて低炭素技術の移転を国内産業の市場拡大につなげようと、2010年頃から孤軍奮闘しながら途上国のパートナーを増やしてきた経緯がある。一方、JCMの活用が国連に認められるかが不透明で、日本企業はもとより途上国も及び腰というのが実情だった。パリ協定は初めて、JCMなど市場メカニズムの活用を認めた。詳細な運用ルールの交渉も始まる。

 資金に関する規定はこうだ。2010年のカンクン合意は先進国に、途上国に対する年1000億ドルの資金支援を義務付けた。パリ協定はこの支援の2025年までの継続と、2025年以降にさらに上積みすることを求めた。日本もその一翼を担っている。

 問題は、この資金支援が、日本がJCMなどを通じて行う技術移転や、ましてや日本企業の商機拡大とは必ずしも結びついていないことだ。双方を、効果的に結びつけるインフラ作りがパリ協定の宿題になる。

 途上国への技術移転に詳しい東京大学の本部和彦客員教授は、「技術と資金の支援を効果的にリンクさせ、日本の資金を無駄に使わずに日本企業の商機拡大に生かせる道を探らなければならない」と指摘する。

 求められるのは途上国に対して日本の低炭素技術が移転される際に、必要な資金が融資されるようにすることだ。改善には、技術を開発する製造業、途上国での事業を開発する商社やプラント会社、資金融資に関わる政府系や民間の金融機関がタッグを組み、「具体的な仕組みづくりに知恵を絞る必要がある」(本部客員教授)。 具体的には、製造業が協力して効果の高い低炭素技術をコストや運転データとともにリストアップする。途上国がそこから設備を選んだら、国際協力銀行(JBIC)などによる公的融資に民間金融機関が協調して、十分な額が日本から融資されるようにする。

 日本が目指す「低炭素技術による貢献」が実のあるものになるように、政府は仕組みづくりに本腰を入れるべきだ。また、企業は今一度、低炭素技術で途上国市場を拓く機会があるか、見極める時期にきている。

■パリ協定が分かるキーワード②