政府が今夏からまとめる「エネルギー・環境イノベーション戦略」。経済産業省はこの戦略を、長期戦略の中核に位置付ける考えだ。水素サプライチェーン技術や次世代蓄電池などの「有望分野」を伸ばす方針を示す。安倍晋三首相が経済成長と温暖化対策を両立させる3つの原則の第一に「イノベーション」を挙げ、特に革新的技術による解決を求めた経緯もある。「パリ協定が求める抜本的な排出削減を遂げるには、今は想定もできない、革新的な技術が鍵。現在の技術の延長線上にない研究開発の加速が中核になる」と、経産省幹部は強調する。

 だが、長期戦略は早くも難産が予想される。経産省と環境省はまたもつばぜりあいを始めた。

 環境省は2015年10月「気候変動長期戦略懇談会」を設置し、2月に委員らが提言をまとめた。提言によれば第4次環境基本計画に記載した「2050年に80%削減」の目標と2030年目標を達成すると同時に、日本の「構造的な経済的・社会的課題」を解決するという。政府は5月にも2030年目標の達成を裏付ける「地球温暖化対策計画」を閣議決定する。環境省は提言を基に長期ビジョンを構想し、計画に組み込む意欲をみせる。

 提言は、温暖化対策と経済成長を両立するため、CO2排出への価格付け(炭素価格)や、環境金融の活性化により、消費者や企業が低炭素型の製品・サービスを購入・調達する「グリーン新市場」の創出を目指すとしている。

 環境省懇談会の提言について、経産省幹部はこう話す。「2050年80%削減という目標ありきで技術と対策を積み上げようとしている。過度の省エネを社会に強いる上、産業の大幅縮小を伴う」と指摘する。2050年に1990年比で80%の削減を遂げると、国内排出量が2億5000万tにまで減るが、GDP(国内総生産)は320兆円に縮小するとの試算もある。

 長期戦略の作り方や、その中での2050年80%削減目標の位置付け次第で企業には大きな影響が及びそうだ。

 ただ、不協和音はあれどこれからの日本の取り組みの柱が、低炭素技術による貢献となるのは間違いない。

技術移転本番、インフラ作れ

 3つ目の宿題は、事情が少々複雑だ。まず、パリ協定が求める技術に関する規定を整理しよう。

 長期に及ぶテーマと、短中期のテーマがある。長期では、革新的技術の研究開発促進が肝となる。パリ協定は技術革新の必要性を強調。5月の交渉を皮切りに、革新的技術の研究開発方針(技術長期ビジョン)を各国が協力してまとめる。日本はこれに、エネルギー・環境イノベーション戦略を押し込む努力が必要だ。

■2020年までの国内外の動向見通し