目標の再提出は、各国が2020年以降に自主的に取り組む温暖化対策を「前進」させるため。長期戦略は2050年など長期を視野に入れた温暖化防止を促すためだ。

 加えてパリ協定とその関連決定は、先進国から途上国に対する技術の移転と、資金の支援をうまく組み合わせる仕組みづくりを求めている。

 中期の目標や、長期の戦略を世界で押し進める柱となるのは、大幅な削減につながる低炭素技術を、経済成長を遂げたい途上国にまで普及(移転)させること。これまでも国連の下、技術移転の推進が検討されてきたが目覚ましい成果は上がっていない。別途、先進国が拠出する資金支援と結びつけ、効率的に移転を進める仕組み作りが急務になっている。

2020年に日本も目標再提出

 手強いのは、2020年に提出期限が迫る削減目標の再提出だ。

 パリ協定はこの年、参加国に削減目標(自ら決める貢献:NDC)の提出を求めている。米国のように2025年までの削減目標を掲げる国が、ここで新たに2030年などを期限とする目標を提出する。同時に、2030年までの削減目標を提出済みの日本や欧州連合(EU)なども目標の「更新や提出」が求められる。目標は変更しなくてもいいが、改めて提出する。変更する場合も目標引き下げは認められない。目標引き上げ、すなわち前進だけが認められる。

 国連は2018年、世界全体の削減状況を確認する「促進的対話」を実施する。国ごとに評価するわけではないが、取り組みが不十分と評価されれば国際的な圧力もかかる。加えて同じ年、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は1.5℃に気温上昇をとどめるための温室効果ガス排出シナリオに関する特別報告書を発行する。こうした一連の流れが、目標引き上げを求める世論の高まりに火を付けかねない。

 不安材料はまだある。提出期限を控えた2019年、米国はどのような2030年目標を策定するかだ。民主党大統領なら踏み込んだ削減目標も考えられるとの見方もある。日本の2030年目標と比べて差が付けば、政府も目標を点検しないままではいかなくなる。2019年にさらに高い目標を求められるリスクを念頭に置いた方がいい。

長期ビジョン巡り政府の攻防

 長期戦略も提出期限は2020年である。正しくは「長期の温室効果ガス低排出発展戦略」との名称で、国ごとに2050年を視野に対策方針を策定して、国連に提出する。

■パリ協定が分かるキーワード①