2020年、日本最大となるウインドファーム(風力発電所)が青森県に誕生する。米ゼネラル・エレクトリック(GE)が、38基もの風車を納入する。3月、発電所を運営するグリーンパワーインベストメント(東京都港区)が発表した。ウインドファームの発電容量は約12万kWと大規模で、一般家庭約9万世帯分の年間消費電力量に匹敵する電気を東北電力に供給するという。
風力発電など再生可能エネルギーの導入拡大は、地球温暖化防止の重要な施策の1つである。世界190以上の国や地域が合意した温暖化防止の国際条約「パリ協定」の目標達成にも貢献する。日本の全発電量に占める再エネの割合は、2016年度に約15%。政府は2030年度までに22~24%に引き上げる方針だ。国連環境計画などによると、日本におけるウインドファームやメガソーラー(大規模太陽光発電所)など再エネ発電事業への新規投資は144億円(2016年)で、中国、米国に次ぐ世界3位である。とはいえ、日本の導入目標は、欧州や米国などの水準に比べると低いのも事実だ。
国のエネルギー戦略である「エネルギー基本計画」を見直す経済産業省の検討会は、この再エネ導入目標を継続する案を示している。再エネと、原子力発電の導入目標を変えず、それぞれ2割程度とし、残る6割弱を石炭など火力発電で賄うという。エネルギー安定供給と経済性を重視する経産省だが、石炭火力への依存を抑えたい環境省とのつば競り合いが長らく続く。
政府内で意見の対立もある日本のエネルギー政策を海外はどう見ているのか。12月に開催するパリ協定での国際交渉の行方は。欧州委員会のジェイコブ・ワークスマン首席交渉官に聞いた。
日本のエネルギー政策をどう見るか。現在、国内で石炭火力発電所の新設計画が40件程度あるとも報じられる。

欧州委員会 気候行動総局 アドバイザー EU気候問題首席交渉官
ワークスマン:他の国の政策について語る時は慎重でありたいと考えている。私は日本の専門家ではない。石炭を使う国にはその国の事情があるだろう。
2011年に起きた福島第一原子力発電所の事故の後、日本が(電量供給力を確保しつつ、温暖化対策を進めなければならないという)ジレンマを抱える中、石炭火力を使わざるを得ない事情を理解できる。また、同情も感じている面もある。
ただ、時を経るにつれ、日本への共感に加え、ある疑問も抱くようになった。日本ほど資金力も技術力も十分に備えた国がなぜ、このジレンマの解決策を見いだせずにいるのか。再エネを導入し、原発への依存から脱却し、新たなエネルギー源への移行をなぜ果たせないのだろうかと。
世界の気候変動問題を担当する交渉官が集まる非公式会合(2月に東京で開催)には今年で4回目の参加だが、今回は日本政府から、気候変動への対策、特に再エネの導入拡大について非常に前向きで意欲的な話を聞くことができた。日本でも、2050年などの長期を見据えたエネルギー戦略を検討していると聞いている。国際社会が関心を持って日本の動向を見ている。エネルギーミックスをどう構成するか、我々が期待するようなイノベーションをどのように織り込むのか、世界の気温目標を達成するのに貢献できるかどうかに注目している。
これまで日本の温暖化対策は、経済産業省と環境省との間で意見が割れていた。そこに今、外務省が介入し、変化が生じていると感じた。
河野太郎外務大臣のリーダーシップによるものだろう。大臣は、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)がアラブ首長国連邦(UAE)で開いた総会で、再エネの導入拡大の必要性について前向きな発言をしていた。外務省は、パリ協定に「信頼できる当事者」として参加し、また、中国など近隣諸国に対しリーダーシップを発揮するために、日本のやり方を変えなければいけないと考えているようだ。
今、米国のトランプ政権下で独自のビジョンが示されている。日本も同様に、再エネの利用拡大とは別の方向に向かう可能性もあっただろう。実際に外務大臣が語るようになるならば、非常にエキサイティングな変化だと思う。
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