例えば米国の場合は、様々な理由をつけて柔軟に法律を執行してきます。2015年5月に国際サッカー連盟(FIFA)の汚職事件をDOJが起訴した事件が象徴的です。米国の企業が賄賂を渡したのであれば海外腐敗行為防止法(FCPA)の贈賄罪になります。しかし、FIFAの幹部は公務員ではないのでFCPAは適用されません。そこでDOJは、マフィアなどを撲滅するためにつくったRICO(リコ)法などを使って摘発するのです。RICO法は米国内で犯罪行為があった場合に適用されるので、例えば米国のテレビ会議を使って謀議したり、金融システムを使って送金したりすると犯罪行為に該当します。

 FCPAには共謀罪もあります。例えば、米国企業や米国に上場している企業の子会社などとジョイントベンチャーを組んでいる場合に、提携した米国企業に犯罪行為があると、米国外の企業にも共謀罪が適用されます。ナイジェリアの贈賄事件で日揮が刑事責任を問われたのも共謀罪です。「この会社を挙げるぞ」と決めると、DOJは様々な手を使って摘発の準備をするのです。

 過去、最も大きいペナルティは、独シーメンスが2008年に受けたものですが、米独両国の当局に8億ドルずつ合計16億ドルの制裁金などがかされています(下の表)。それだけではなく、内部調査のためにシーメンスは14億ドルの費用を支出しています。グローバルに展開している日本企業の担当者は、贈賄の問題に神経をとがらせるようになっています。

◆米国による罰金・制裁金の上位10件
出所:FCPA Blog, 2016年2月19日を基に作成

米国の越権行為ではないのですか。

 本来であれば、日本側は主権侵害だと主張できるはずです。しかし、1999年に経済協力開発機構(OECD)の外国公務員贈賄防止条約が発効しているので、「悪いことをしている企業を取り締まれないあなたの国の検察に代わって法を執行しているのだから逆に感謝してほしい」という理屈が通ってしまい、こちらは反論できない立場です。

先進国でも贈賄リスク拡大

日本企業でも3月2日、オリンパスはFCPAに加え、米国内での反キックバック法と米国虚偽請求取締法による違法行為について多額の制裁金を支払うことでDOJと合意したことを発表しました。

 同社は、米国及び中南米で、内視鏡販売などに絡む腐敗行為で捜査を受け、最終的に6億4600万ドルという巨額のペナルティをかされました。さらに中南米で行った不正な利益の提供についてはFCPAが適用され(2280万ドルの罰金)、米国内で行った利益提供に関しては、反キックバック法と虚偽請求取締法が適用されました。当然、米国内での利益提供行為については、当局による越権的な法執行とはいえませんが。

 注意していただきたいのは、適用された法律は、FCPA、反キックバック法、不正請求法などと異なっていますが、オリンパスがとった問題行為はいずれも基本的に同様の腐敗行為であったということです。

 この事件に関連し、2点だけ強調したく思います。第1は、米子会社OCAの最高コンプライアンス責任者(CCO)であったジョン・スロウィク氏が問題行為に関し会社側に改善を求めていたことです。それにもかかわらず、会社側は対応せず、逆に2010年、彼を解任してしまいました。その結果が約700億円の制裁金だったわけです。グローバルにビジネスを展開する企業は、途上国のみならず、先進国にあっても、贈賄リスクが大きいということを再認識する必要があると思います。