岡田CEOは費用を明かさないが、同社の方法なら1つの大きなデブリを除去するのに国際機関などが見積もる額(約40億~50億円)の10分の1以下にまで抑えられるとみられる。事業開始後は、世界の宇宙機関からの受注を狙う。

 アストロスケールの下に「スペーススウィーパー(宇宙の掃除屋)」と名乗る技術者らが集まったのは2013年のことだ。次第にメンバーを増やし、現在は民間企業と、大学、研究機関、高等専門学校のエンジニアらが名を連ねる。

 2014年に打ち上げた超小型衛星実証機「ほどよし」3、4号を開発した東京大学の他、東京理科大学、首都大学東京、九州大学、九州工業大学など9つの大学、2つの高等専門学校、航空宇宙関連部品などの製造を手掛ける由紀精密(神奈川県茅ヶ崎市)、切り出し工具の製造・開発で世界トップシェアのオーエスジー(愛知県豊川市)などが集まり、アストロスケールと共同で開発のめどを付けた。オーエスジーは観測衛星のメインスポンサーでもある。

 3月1日に開いた会見ではスペースウィーパーに名を連ねる技術者、産業革新機構の他、同じく除去事業に出資するジャフコらが一同に介した。岡田CEOは「エンジニアと投資家、そしてここに集まったメディアも、これからの宇宙開発を進めるために総力を挙げて、立場など関係なく宇宙掃除に挑まなければならない。異業種の力を結集して総合格闘技で挑まないと」と、熱弁を振るった。

左はデブリを除去する衛星の子機、右は小さいデブリのマップを作成する観測衛星のモックアップ
左はデブリを除去する衛星の子機、右は小さいデブリのマップを作成する観測衛星のモックアップ

正月に思い立ち、4カ月で起業

 岡田CEO自身は、宇宙業界では新参者で除去技術を確立できるエンジニアでもなかった。農学部で学び、旧大蔵省に入省後、経営コンサルタントに転じた。IT(情報技術)企業も起業した。40歳を前に、人生を何に投じるか自問した。答えのヒントは、宇宙飛行士体験プログラムに参加するため、15歳で訪れたNASAの思い出にあった。

 「気持ちを腐らせた少年だった」(岡田CEO)が、その地で訓練を受けていた毛利衛氏に出会って変わった。「宇宙は君たちの活躍するところ」という自筆メッセージを受け取って発奮し、帰国後は勉強に打ち込んだ。「自分を奮い立たせてくれた毛利氏や、宇宙に関わる人たちに恩返しをしたい」。ふとそんな気持ちが湧いた。2013年の正月のことだ。調べると、宇宙でデブリが問題になっていた。

 その年の2月には海外の宇宙関連会議を訪れ、学者や政府関係者にデブリについて尋ねた。ところが、誰も解決策を持っていない。「自分が解決する」と決意し、5月に起業した。

 アストロスケールは大塚製薬との協力事業を進めている他、いくつかの宇宙関連事業を展開した収益でこれまでの研究開発費を賄っている。遠い宇宙に飛び立ちたい人類の夢を支える宇宙掃除ビジネスの離陸が近づく。

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