洪水が激甚化するなど「気候変動」の被害に苦しむのはカンボジアに限った話ではない。世界で自然災害が激甚化している。

 2016年に発効した国際条約「パリ協定」は、温室効果ガスの削減を意味する「緩和」に加え、顕在化し始めた異常気象の影響を抑え、国土や生活を守る「適応」の必要を訴えている。

「適応」という50兆円のフロンティア

 途上国における適応の対策コストを様々な機関が試算している。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」によれば、適応にかかるコストは2050年まで年間7兆~10兆円に達する。「国連環境計画(UNEP)」は、2030年に年間30兆円、2050年に同50兆円の対策コストが生じると試算する。裏を返せば適応に役立つ製品やサービス、事業モデルにこれだけ大規模な商機があるということだ。

 新市場の萌芽に目を光らせる英国政府は2013年、2011~12年に各国の民間企業が適応ビジネスで売り上げた額をはじき出した。トップは米国の2兆3000億円、中国が1兆4000億円で続く。日本は6800億円で3位だ。7位の英国は適応ビジネスのテコ入れを急いでいる。

 日本も、経済産業省や環境省などが適応に注目する。国内に加え、途上国の適応への貢献が民間企業の商機になるとみている。

 適応ビジネスは裾野が広いことも国や企業の関心を引き付けている。経産省は昨年末の報告書で適応ビジネスを7つに分類した。(1)自然災害に対するインフラの強靭化、(2)食糧の安定供給・生産基盤の強化、(3)保健・衛生、(4)エネルギー安定供給、(5)気象観測と監視・早期警戒、(6)資源の確保、水の安定供給、(7)気候変動リスクに関わる金融――だ。あらゆる企業に、「適応」という50兆円の新市場に乗り出せる可能性がある。

 例えば保健や衛生では、住友化学が適応ビジネスを展開している。1980年代、多くの人命を奪うマラリアなどを媒介する蚊を防除するため、アフリカで蚊帳の普及が求められた。近年の異常気象は、蚊が発生する地域を広げ、数も増やしている。