しかし、堆肥化は処理業者の姿勢次第では問題を起こしやすい処分方法である。堆肥化とは、廃棄食品や下水汚泥などに、もみ殻やおがくずなどを混合して含水率を調整した後、好気性発酵させて水分や臭気などを飛ばし、肥料成分(窒素、リン酸など)を均質化する処理のことだ。熟成期間として数週間から数カ月を要する。

 まともに堆肥を作ろうと考えていない不正業者にとって、熟成期間をコントロールすれば、施設の受け入れ能力(見かけの処理能力)はいかようにもなる。例えば8週間で完熟する堆肥を4週間で出荷すれば受け入れ能力は2倍になり、2週間で出荷すれば4倍になり、まったく熟成しないなら無制限に受注できることになる。初めから熟成させる気がない業者は、堆肥化が難しい廃棄物も無差別に受け入れるようになる。粗悪な堆肥は含水率調整材として安価な木くずチップを使うので、白蟻駆除剤由来の亜ヒ酸、銅・クロム化合物、有機リンなどが検出されることもある。

 受注が過大になった堆肥化施設では、堆肥として売れない未熟成堆肥を土壌改良材として農地造成現場や牧場などに多量に出荷するようになる。さらには未処理廃棄物を横流ししたり、不法投棄したりするようになる。施設内のストックヤードが満杯になれば、場外受け入れや場外保管を始めるなど、手口がエスカレートしていく。ダイコーでも場外保管(無許可積替保管場)が指摘されている。

売れ残りより廃棄物の方が再販価値が高い

 スーパーやコンビニの店頭で賞味期限が切迫した食品は、期限が付いたままでは販売することができないので、お弁当などへの再加工が必要になる。だが、メーカーや流通業者の倉庫からの在庫廃棄の場合は、賞味期限がまだ十分に残っていることが多く、しかも量や品質も揃っているので、そのままでも売れてしまう。

 とくに今回の壱番屋の冷凍カツのようなロット単位の事故廃棄の場合は、賞味期限がそっくり残っている。つまり、店頭売れ残り食品よりも廃棄物(メーカー在庫廃棄食品)の方が再販価値が高いことになる。

 ダイコーは、福島第一原発事故の風評被害を受けた廃棄食品を受け入れたことをきっかけとして、在庫廃棄食品の価値の高さに気付いたと報じられているが、横流しを常習化させ、より安価に処理を受注できるようになり、さらに多数の企業から廃棄食品を集めるという悪の循環に陥ったと考えられる。廃棄カツ1枚を33円でみのりフーズに転売した(複数のブローカーを経由し、スーパーの末端価格は80円)ということだが、廃棄物の価格ではあり得ない。価格支配力が売り手側のダイコーにあったことがうかがわれる。

 一般的に流出品や盗品という事情が分かっていて取引する場合には市価の1割以下、正規品に偽装して取引する場合は6割程度の価格である。

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