2012年のロンドン五輪は「環境五輪」と言われ、大会で排出するCO2を削減したり、調達する原材料を持続可能なものにしたり工夫をしました。東京五輪でも環境や人権に配慮した原材料の「持続可能な調達コード」を策定し、農産物、畜産物、水産物の基準を発表しました。こうした持続可能性の取り組みは、選手にも伝わっているのでしょうか。

池田:正直なところ、北京やロンドンの五輪に出場した時は、選手村の食堂で提供される食材の産地がどこかとか、環境や社会に配慮した持続可能な食材かということを考えている余裕はありませんでした。しかし今、東京五輪に飲食戦略検討委員として関わるようになって、食材の産地や使われ方、食品廃棄物の削減を五輪選手ももっと学ばなければならないと考えるようになりました。

スポーツで貧困地域や被災地の問題を解決

 試合が終わった後、様々な文化を体験したり、選手村で交流したいと思っている選手も大勢います。デジタルサイネージによる食材の産地などの情報発信も一つの方法ですが、食堂にそば打ちや茶の湯のスペースを設けたり、ごちそうさまの語源をレクチャーする人を配置したりして、日本の食文化を体験できる機会を提供するのもよいと考えています。

 スポーツは、環境面や社会面への配慮や社会課題の解決に貢献できると僕は考えています。アスリートはそうした取り組みのハブになれると思います。

スポーツを通して社会課題を解決する活動にはどのような例がありますか。

池田:海外のローレウス財団では、アスリートがスポーツを通して貧困地域や被災地などが抱える問題の解決に貢献できるような活動を展開しています。日本でも日本財団による「HEROs Sportsmanship for the future」というプロジェクトが2017年10月に始まり、僕もアンバサダーの1人になりました。これはアスリートと共に「ソーシャルイノベーション」を生むというプロジェクトです。

 アスリートは競技で学んだことを生かし、スポーツの力を借りて社会課題の解決に生かせる機会がたくさんあります。例えばサッカーの宮本恒靖さんは内戦で分断されたボスニア・ヘルツェゴビナを拠点に、多様な民族の子供が一緒に仲良く通えるスポーツアカデミーを設立して運営しています。