続いて、横浜国立大学名誉教授の浦野紘平氏の話をお聞きいただこう。

横浜国立大学名誉教授<br />浦野 紘平氏
横浜国立大学名誉教授
浦野 紘平氏

豊洲以外の代替地を議論せよ

濃度急が上昇し、汚染が広範囲に出た原因は。

浦野:環境基準値を超える汚染物質が広範囲に検出されたのは、地下水管理システムの稼働が影響したと考えられる。地中に残っていた汚染物質が井戸に移動し、汚染物質が広範囲に検出された可能性が高い。

 地下水を採取・保管・分析する際の過程が、測定結果に影響を与えた可能性もなくはない。例えば、井戸から水を採取する際、たまり水を採水しないように、観測井戸の水を出してから本来の地下水を採取する。環境省は、こうしたルールを規定したガイドラインを公開しているが、どこまで厳密に調査したかによって、測定誤差は出る。過去の調査の厳密な検証や再現は難しいだろう。

 ただし、環境基準値79倍ものベンゼンが、作業の違いによって生じたとは考えにくい。ベンゼンは揮発性物質のため、雑に扱えば濃度は低く出る。豊洲市場内には201本の観測用井戸があるが、過去のすべての調査で、人為的な要因によって検出値が小さく出たとは考えにくい。つまり、汚染は取り切れておらず、残っていたものが出たと考えるのが妥当である。

移転の可否にどのような影響が出そうか。

浦野:地下水管理システムを稼働させ続ければ、汚染はなくなる方向に向かうだろう。ただし、汚染が完全になくなるのが、何年後になるのかは分からない。今すぐ再調査しても今回と似た結果が出る可能性が高い。

 環境基準値を超えた水を飲んだり使ったりするわけではないので、健康リスクはない。しかし、人間は科学的な評価だけで物事を判断しない。どこまでリスクを受け入れられるかという「リスク認知」も重要で、リスク認知は主観的な感情に左右される。

 今回の調査によって、汚染物質はまだ土壌に残っており、汚染状態の把握も難しいことが明らかになった。こうした土地で食品を扱うことに対する市場関係者や消費者の不安は、ますます大きくなったのではないか。豊洲以外の代替地探しの議論を本格化させるべきだ。