日経エコロジーでは、土壌汚染に詳しい専門家2人に、今回の調査結果に対する見方を聞いた。
 まず、富山大学大学院地球生命環境科学教授の丸茂克美氏のインタビューを紹介する。

富山大学大学院 地球生命環境科学教授<br />丸茂 克美氏
富山大学大学院 地球生命環境科学教授
丸茂 克美氏

第2、第3の汚染が見つかる可能性ある

今回の調査で汚染濃度が急上昇した原因は。

丸茂:環境基準値の79倍ものベンゼンが検出されたのは、土壌中に汚染が残っていたからと考えるのが合理的だ。土壌汚染対策工事の際に見逃したと考えられる。帯水層の底、すなわち不透水層の直上にタール状になったベンゼンが残っていたのでないか。あるいは軽い油成分と一緒に帯水層の上部に残っていた可能性もある。地下水管理システムの稼働で帯水層の水が動いたことで汚染が移動し、検出されたのだろう。

 問題は第2、第3の汚染箇所が存在し得ること。対策工事の際に土壌汚染対策法(土対法)のガイドライン通りに調査しなかった可能性がある。ガイドラインでは帯水層の表面から深さ1m、2m…と土を取り、帯水層の底の土も調べなければならない。しかし底の土を取らず、沈んだタールを見逃したのでないか。ガイドラインにも問題がある。モニタリングでは観測井戸の深さ中央の1点でのみ採水すればよい。これでは汚染の実態を正確に把握できない。

今後、東京都が採るべき対策は。

丸茂:提案したいのは、モニタリング方法の変更だ。まず豊洲市場の全観測井戸で深さ方向に複数箇所で採水し、人為的な分析誤差が出ないよう「現場分析」をすることだ。その上で高い汚染が検出された箇所だけ、地下水管理システムによる水の移動で汚染物質がどのように移動するか数日間調べ、全体像を把握すべきだ。全体を500万円程度でできる。現状のモニタリング方法では本質的な解明にはつながらない。

 東京都の選択肢は2つある。もし汚染の規模が軽微なら、地下水管理システムで徐々に浄化されることを市場関係者に説明し納得してもらう。しかし汚染が一定以上なら、お金をかけて再度除去するか移転をやめるかだ。土壌中に高濃度のベンゼンが残っていれば揮発して地下空間に出るため排気を続ける必要がある。築地ブランドを損ねてまで移転するメリットはない。汚染状況を解明し、対策を練るまで豊洲市場は開くべきではない。今回、土対法が現状に即さない問題も見えてきた。豊洲は土対法にも一石を投じた。

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