人為的な誤差はわずか

 なぜ、広範囲かつ高濃度の汚染が検出されたのか。2つの可能性が考えられる。1つは、地下水の採取・保管・分析工程で人為的な作業が影響した可能性だ。もう1つは、地下に土壌汚染が残っていて、地下水を排水する「地下水管理システム」が稼働したことで汚染が出てきた可能性である。日経エコロジーが、土壌汚染に詳しい専門家らに取材した結果、後者の影響が大きそうなことが分かった。

 地下水モニタリング調査では、地下水を採取し、保管し、分析するという工程を経る。都の調査では、1~3回目、4~8回目、9回目で採水と分析の調査会社を変えている。調査会社や作業員によって測定値が変わる可能性はあるのだろうか。

 それぞれの工程の作業方法や手順は、環境省が「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン」を定めており、人為的な誤差は生じないようにしている。環境大臣または都道府県知事が指定した「指定調査機関」が、環境省が実施する国家試験に合格した技術管理者の下で作業することになっている。

地下水管理システムの概要(出所=専門家会議の資料を基に作成)
地下水管理システムの概要(出所=専門家会議の資料を基に作成)

 とはいえ、作業員がどこまで厳密に調査するかは、委託先に任されている。ある指定調査機関の社長は、「水を採水器で採取するのかポンプを使うのか、水を容器に入れる際に空気の隙間がなく密閉しているか、分析装置の校正をどこまで厳密にするかなど、作業員によって測定値が変わる可能性はある」と話す。

 ただし、今回取材した専門家は、「人為的な誤差は出てもせいぜい数倍で、今回のように環境基準値79倍もの汚染が誤差として出ることはない」という見解で一致している。もう1つの可能性である「地下水管理システム」の影響はどうか。

 地下水管理システムは、地下の水位を一定に保つために設置された設備で、地下水が上昇したときにポンプで水を抜く「揚水井戸」、抜いた水を浄化して排出する「浄化施設」、水位を観測する「地下水位観測井戸」を備える。システムが24時間稼働を始めたのは昨年10月14日で、9回目の採取はその後の11月24日と30日に実施された。

残っていた汚染が出たか

 観測用の井戸は筒状で、スクリーン(網)を通して土壌中の水が浸み込んでくる構造になっている。地下水管理システムが水を汲み上げると、地中の水が井戸に向かって移動する。水に溶けた状態で残っていた汚染物質が井戸に吸い寄せられ、あちこちの井戸で検出された可能性が高い。基準値79倍のベンゼンは、土壌汚染対策で取り切れていなかった汚染とみられる。

 地下水管理システムを稼働し続ければ、土壌中に残る汚染は浄化されていく方向に向かう。ただし、どの程度の汚染があり、完全に浄化されるのがいつになるかは不透明である。今回明らかになったのは、取り切れなかった汚染がまだ残っている可能性が高く、地下水管理システムによってそれが徐々に浄化されていくということだ。こうした事実を市場関係者や消費者がどう受け入れるかが、移転を判断する際の1つの焦点となるだろう。

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