安くて収納しやすいだけじゃない

 AIを活用して物流を効率化するアスクル。顧客の利便性向上と物流コスト削減を追求する中、企業の買収にも踏み切った。買収先は物流会社でもIT(情報技術)関連会社でもない。嬬恋銘水という群馬県嬬恋村にあるミネラルウオーターのメーカーである。

 昨年5月から「LOHACO Water(ロハコウォーター)」の商品名で売られているミネラルウオーターを製造するのは、2015年8月にアスクルグループに加わった嬬恋銘水だ。2リットルペットボトル入りの5本セットで343円と、1本当たりの価格は他のナショナルブランドの商品より2~3割程度安い。低価格や収納のしやすさで顧客を引き付け、よく売れている。約50万点あるロハコの商品のうち、最も売れる人気商品だ。だが、アスクルがやりたかったのはミネラルウオーターをたくさん売ることではない。真の狙いは物流コストの削減にある。

 2リットルペットボトル入りのミネラルウオーターは、6本セットや9本セットで売られている商品が多いのに対して、ロハコウォーターは5本セットになっている。例えば6本セットの場合は段ボール内に、横に2列、縦に3列並んでいるのが一般的だ。5本セットのロハコウォーターは、横に1列、縦に5列並んでいる。この梱包方法に物流コスト削減の秘密がある。

 飲料や食品、キッチン用品、医薬品、化粧品といった日用品を販売するロハコでは、購入客の多くが化粧品や日用品などと一緒にミネラルウオーターを買う。1回の買い物で買った商品は通常、一箱にまとめて詰めて届ける。ところが、6本セットや9本セットのミネラルウオーターは、他の商品と一緒に詰められないので、荷物の数が1つ増えてしまう。

 アスクルは配送を外部の宅配業者にも委託している。その際、荷物の数に応じて料金が決まるため、荷物を1つにまとめられないとコストアップにつながる。自社配送についても、6本セットや9本セットはかさばるためトラックの積載効率がよくなかった。

 ロハコウォーターの場合は縦に1列しか並べないので、ペットボトルが横になるように倒せばそれほどかさばらない。ロハコで配送用に使っている段ボールの底に寝かせるように置き、その上に他の商品を載せればまとめて運ぶことが可能だ。荷物がコンパクトで1台の車にたくさん積めるので、配送コストの削減にもなる。アスクルは荷物の数を減らしたいがために、水の会社まで買収し、5本セットという他にはない独自商品を開発したのだ。

ロハコウォーターの5本セットは、2リットルペットボトルが横に1列に並んだ状態で段ボールに入っている。かさばらずすっきりしているので、部屋に置いてもインテリアに溶け込みやすい
ロハコウォーターの5本セットは、2リットルペットボトルが横に1列に並んだ状態で段ボールに入っている。かさばらずすっきりしているので、部屋に置いてもインテリアに溶け込みやすい
ロハコウォーターを段ボールの底に寝かせて置けば、日用品などと一緒に詰められる
ロハコウォーターを段ボールの底に寝かせて置けば、日用品などと一緒に詰められる

 物流の効率化は、アスクルのような通販事業者に限られた話ではなく、あらゆる企業にとって喫緊の課題だ。

 納期遅延や誤配送、運賃上昇──。トラックの運転手不足からこうしたリスクが増しており、荷主企業は物流戦略の転換を迫られている。厚生労働省が1月31日に発表したトラックを含む自動車の運転手の有効求人倍率は2.7倍(昨年12月)だった。18カ月連続で2倍を超えており、慢性的な不足感が続く。物流業者は、荷物の積み下ろし作業の負担が少なく、待機時間も少ない仕事を優先する傾向にあるという。荷主企業はトラックを確保するため、CO2削減にも寄与する効率的な輸送方法への切り替えを急いでいる。

 無駄の多い運び方をしている荷主企業は物流業者に敬遠されかねない。競争が激しくなる中、物を運べずに商機を逃すといった失態は許されないだろう。企業は輸送効率のさらなる向上が求められている。