さて、マナカプルの湖での捕獲調査を終えて、マナウスに戻り、まずは国立アマゾン研究所内にあるマナティー水槽を案内してもらった。一般公開されている「科学の森」の人気展示でもあり、将来的にはフィールドミュージアムの「一部」となるものだ。ここだけ見ると、水族館的でもある。

「大きな円筒形のプールが3つあります。そのほかに、非公開部分ですが、赤ちゃんマナティー用のプラスチックの小さなプールが6つ。今、この瞬間にも、50頭近いアマゾンマナティーが、INPA内の飼育施設に保護されているんです」

 50頭のアマゾンマナティー!

「もう保護されてくる個体が多過ぎるんですね。私が2007年に実験を開始したときは、年に2~3頭だったんですけど、いまはそれどころじゃないと思います。私が来るたびに新しい子が保護されてきてるみたいなかんじです。2013年には10頭、14年は夏までの時点で7頭ですよ。前は他にも受け入れ施設があったんですが、今はここだけになってしまって、でも、それ以上に、保護される個体数が増えてきているようですね」

密猟と混獲と

 では、なぜ、保護される数が増えるのだろうか。それも、小さな赤ちゃんマナティーが助けられるケースが多いというのだ。

アマゾンマナティーと菊池さん。
アマゾンマナティーと菊池さん。

「密猟では、子連れの母親が狙われます。母親の肉がおいしいって言われてるんですよ。マナティーの子育ては母親が何年か子どもと一緒にいるので、親子が一緒にいるのを見つけて、母親だけを捕獲するようです。幼い子どもは衰弱してストランディングしているのを保護されます。母親が捕獲された時にやられたのか、頭に鉈で切られた生々しい傷跡がある子が保護されてきたこともありました。あとは漁網への混獲ですね。大人のマナティーは力があるので網を壊したり、網の底から器用に抜け出せるようですが、小さい子は網から抜けられなくて、混獲されてやっぱり衰弱した子が保護されています」

 アマゾン地方では、マナティーの肉は美味しいとされている。草ばかりたべている哺乳類だから、本当にカイギュウの名の通り、牛肉に近いのかも知れない。地元でのマナティーの呼び名も、Peixe-Boi、「牛魚」(Peixeが魚で、Boiが牛)だ。

左は「科学の森」のパネル。マナティーは地元で「Peixe-Boi」、つまり「牛魚」と呼ばれている。日本語でも「海牛(カイギュウ)」の仲間。
左は「科学の森」のパネル。マナティーは地元で「Peixe-Boi」、つまり「牛魚」と呼ばれている。日本語でも「海牛(カイギュウ)」の仲間。
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「マナウスでも、一部の店ではアマゾンマナティーの肉が売られてます。私みたいな日本人が行っても、出してはくれないんですが、地元の人が行って尋ねれば、マナティーの肉を販売する店もあるそうです。でも、そんなに高くないらしいですよ」

 何かもの悲しくなってきた。お金にならないなら、なんでわざわざ法をおかしてまでマナティーをとるのだろう。伝統的な食料として、自家消費する分をとって、少しでもお金になるなら、と残った分を売るとか、そういうことなのだろうか。

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