アマゾン川を象徴する希少な動物、アマゾンマナティー。IUCNに「危急種」と指定され、ブラジルでは保護の対象になっているものの、その生態は謎に包まれている。「こんなに魅力的な動物は他にいない」とアマゾンマナティーに惚れ込み、2007年からアマゾンに通い続けて研究と保全活動を行う菊池夢美さんの研究フィールドに行ってみた!

(文・写真=川端裕人)

 京都大学野生動物研究センターの研究員、菊池夢美さんは、日本では数少ない(世界でも決して多いとはいえない)、マナティー研究者だ。

 同じ水生哺乳類でも、イルカやクジラとは知名度が違うし、そもそも日本には野生のマナティーはいない。同じカイギュウ(海牛)類であるジュゴンは少しだけ沖縄にいるが、生物学的な探究の対象というか、政治的な駆け引きの対象になっている感もある。日本でマナティーが見られるのは水族館だけで、沖縄県の美ら海水族館、香川県の新屋島水族館、三重県の鳥羽水族館、静岡県の熱川バナナワニ園の4カ所。そのうち熱川のものはアマゾンマナティーだ。1969年に「来日」した、推定年齢が50歳を超える長寿マナティーでもある。

八木アンテナで確認

 さて、アマゾン川沿いのマナカプルの湖。アマゾンマナティーの捕獲調査が終わるよりも前に、菊池さんは、準備してきたデータロガーをすべて装着し終えた。湖にいると分かっているのは11頭で、データロガーの数は4つだ。ぼくが最初に見た個体が、たまたま、4頭目の装着個体だった。

京都大学野生動物研究センターの菊池夢美さん。

 以降、菊池さんは、すでにロガーを着けて湖を泳いでいるマナティーたちの位置を八木アンテナで確認しつつ、ロガーが分離するのを待つ状況になった。なお、湖は淡水なので、マナティーが多少潜っても、電波は通る。携帯用の八木アンテナを振り、受信機のゲインを調整し、ピコピコという音を確認しては、「湖のあっち側に固まっていますね」というふうに居場所を特定する。がんばって目視しようにも、素人の場合はそれも不可能な水生動物の居場所が、常にだいたい分かるというのは、すごいことである。なにか、そういう次元で、ぼくは感動してしまった。

 捕獲調査自体は、まだ続いているので、新しい個体が上がるたび、アマゾンマナティーを目の前にして、菊池さんのレクチャーを聞くことができた。

 ざっくりと構成するとこんなかんじ。