ヤツメウナギの口の模型。魚のような顎はない。(2016年科博特別展「海のハンター展」の展示より)(写真:ナショナル ジオグラフィック)

「顎ができるためには、必ず関節がなければいけないんですが、顎のない脊椎動物には、関節自体、ないんです。全部フニャフニャの軟骨でできているんで、その必要がなくて。じゃあ、関節というものはどういうものかというと、実はすごく複雑です。まず骨端を守る軟骨がなきゃいけないし、その軟骨を包む靱帯がなければいけない。そうやってカプセル(関節包)をつくって、潤滑剤になる滑液を入れなければいけない。遺伝子1つそこに発現したからって、ポッとできるものでもない。だとすれば、おそらく無顎類の段階で、この関節に転用できるような構造があるはずなんです。それが何なのか、仮説を発表した3人がいまして、僕もそのうちの1人です。それを検証しようとしています」

 宮下さんはとても大きく出ている。

 顎の起源としてまず関節の起源を考え、さらにその起源として無顎類に元になった構造があると考える。そして、その構造が何なのか既存の3つの仮説を調べる。3つのうちの1つは宮下さん自身のものだ(2015年に論文発表済み)。

 3つの仮説は、以下の通り。

  • 筋肉が顎関節の起源になった(ゴカイなど骨のない生き物が歯を持っている場合があるが、あれは口の筋肉に歯が直接埋まっていることを想起しよう)
  • ヤツメウナギの幼生に特異的にあらわれる軟骨組織「ムコ軟骨」
  • 軟骨に挟まれた血洞とよばれる血のたまり場(宮下仮説)

 ここではすべての議論を追わないことにして、宮下さんの説のみ解説してもらおう。