まずバックヤードを案内してもらって、度肝を抜かれた。

 とにかくでかい。スペースも標本も。

巨大なバックヤード。(写真提供:川端裕人)
巨大なバックヤード。(写真提供:川端裕人)
標本もでかい!(写真提供:川端裕人)
標本もでかい!(写真提供:川端裕人)

 まだ石膏のジャケットに包まれて、クリーニングされないままになっている巨大標本も多かった。1カ所だけ「これは撮影しないで」という場所があり、とんでもなく完璧なよろい竜の標本が横たわっていた。それが2017年になって「鎧をまとった奇跡の恐竜化石」として発表されたノドサウルス類だ。それほどのものが、ごろっと木製のパレットの上にあった。それがロイヤル・ティレル古生物学博物館なのである。

奇跡の恐竜化石は『ナショナル ジオグラフィック』ではじめて発表された。(画像クリックでフォトギャラリーへ)
奇跡の恐竜化石は『ナショナル ジオグラフィック』ではじめて発表された。(画像クリックでフォトギャラリーへ)

 一方で、クリーニング室は、展示側からも見えるディスプレイ効果を意識したもので、歯医者が使うようなローターを使って、化石のまわりの岩の部分を丁寧に削ぎ落としていく作業がいくつも同時進行していた。従業員の健康対策として、粉塵防護マスク着用、大容量の集塵機が個別の作業台に完備という環境だ。

充実の設備を誇るクリーニング室。(写真提供:川端裕人)
充実の設備を誇るクリーニング室。(写真提供:川端裕人)
こちらはクリーニング中。(写真提供:川端裕人)
こちらはクリーニング中。(写真提供:川端裕人)

 作業をしているのは基本的に従業員だが、ボランティア時代の宮下さんも、しばしばこの中の1人として化石を剖出(ぼうしゅつ)していた。そのせいか、今でもバックヤードを歩くと、「ハイ、マーク」「ダレン、お久しぶり」などと、すれ違う度に会話を交わす。博物館のコミュニティに溶け込んでいる。

 高校生の宮下さんの姿が思い浮かぶ。最初はこれぞと思う技官の後を金魚のフンみたいについていってクリーニングの仕方を学び、若手研究者とちょっと生意気に標本について意見交換し、カリー博士の資料を整理したりしつつ、どんどん知識を深めていったのだろう。