「ちょうどフィルの本を読んだ頃から、恐竜好きが集まる恐竜倶楽部というのに参加するようになりました。毎月、例会がありまして、それにも出たりするうちに、会報『DINO』にもいろいろ書かせてもらうようになって。中学生になってから、倶楽部の会員の方から、ある標本を預かるんです。これ、鉱物・化石専門店で購入したんだけど、どんな種か分からないからちょっと調べてみないかって。それを預かって、僕、科博の真鍋真先生にコンタクトを取って、ちょっと標本を見せていただけますかってお願いしたんですよ。すると当時、新大久保にあった科博の研究室に招いてくださいました。標本を見せてもらって比較して、多分、これはティラノサウルス類だろうというところまで分かったんです」

 恐竜倶楽部は、1988年に設立された恐竜のファングループで、小学生からシニア世代まで年齢性別に関係なく恐竜愛好家が集う。

 一方、国立科学博物館の真鍋真さんは、恐竜を含む爬虫類化石、鳥類化石の専門家だ。90年代後半から21世紀にかけて「真鍋研究室」は、恐竜研究者をめざす大学生、大学院生の梁山泊のような状態だった。まだ日本で恐竜研究者が主宰する大学の研究室が少なく、どこかの大学に籍を置きつつも、共同研究という形で科博の真鍋さんのところで研究するのがひとつの道になっていた。本連載でかつてインタビューした林昭次さん(当時・大阪市立自然史博物館、現・岡山理科大学)もその1人だ。

 ぼくは2002年に『竜とわれらの時代』という小説を書いた前後、真鍋さんの研究室によく出入りしており、上野の科博が休館日である毎週月曜日、柵の内側に入って化石を研究する時にも参加させてもらったことがある。今から振り返ると、その後、日本の恐竜研究を引っ張っていく人材が学生として集っており、すごい時期だったと思う。宮下さんも、かなり年下であるとはいえ、その1人だったのである。

国立科学博物館にある巨大魚竜ショニサウルスの化石の前で。この化石は真鍋真さんがカナダでロイヤル・ティレル博物館の研究者と共同で発掘したもので、発掘中の写真が解説に添えられている。化石は頭部のみでこのサイズ。(撮影協力:国立科学博物館)
国立科学博物館にある巨大魚竜ショニサウルスの化石の前で。この化石は真鍋真さんがカナダでロイヤル・ティレル博物館の研究者と共同で発掘したもので、発掘中の写真が解説に添えられている。化石は頭部のみでこのサイズ。(撮影協力:国立科学博物館)