「キーになるのは、ヌタウナギとヤツメウナギです。ヌタウナギは、深海のテレビ番組なんかでクジラの死骸に群がったりしている目のないウナギみたいなやつです。ちょっと触ると、ヌタ、粘液がいっぱい出てくる。英語だとHagfishっていいます。で、ヤツメウナギのほうは、日本でもよく食用とか薬用で使われていると思うんですけど、川や湖に住んでいて、口にある大きな吸盤で他の魚に吸いついて血を吸う。両者とも、骨でできた骨格を持っていません。分類上は脊椎動物なんですけれども、骨がないとか、あるいは顎がないとか、他の脊椎動物にある特徴がないということで、これまでひとくくりにされてきた分類群です。無顎類ともいいます」

恐竜ではなく、ヌタウナギやヤツメウナギ!
かなり小さな動物になってしまった。
きっと恐竜の研究で博士になるのだろうと思っていた人は肩透かしと感じるかもしれない。ぼくも最初はそうだった。
しかし、話を聞くうちに、対象となる動物の身体は小さくても、テーマの方は超巨大だとあらためて気づかされた。「脊椎動物のボディプラン」を問うのは「脊椎動物の起源」を問うことであり、それは、ぼくたち人間、中生代に繁栄しすでに絶滅してしまった恐竜、その生き残りの鳥類、もちろん魚類や両生類を含み、ありとあらゆる現生・過去の「背骨を持つ生き物」の起源を問うことなのだから。
博士論文でそこにあえて切り込もうとする「蛮勇」にも似た勢いに感嘆する。
これから全6回の予定で、日本の「恐竜少年」だった宮下さんが、「脊椎動物の起源」という、とてつもなく大きなテーマに至るまでを聞いていこう。エキサイティングなものになるのは間違いない。
つづく
(このコラムは、ナショナル ジオグラフィック日本版サイトに掲載した記事を再掲載したものです)
本連載からは、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめたノンフィクション『8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識』(集英社文庫)、宇宙論研究の最前線で活躍する天文学者小松英一郎氏との共著『宇宙の始まり、そして終わり』(日経プレミアシリーズ)がスピンアウトしている。
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