「移動で細かい動きをしていたら、例えば、ツリー・ウェイ(枝と枝などを手や足で掴んで移動すること。オトナが多用)、ブラキエーション(腕だけを使ういわゆる「腕渡り」。体重が軽い子どもがよくやる)とか、スウェイ(枝を揺らして隣の木に移る。見ているとすごい迫力!)とか、細かい動きを書いたり、休んでいるときは座っているとか、立っているとか、姿勢を記入したり。もちろん、食べてるときは、何を食べているかですね。あと、5分おきに高さの記録。10mの高さにいるとか50mの高さにいるとか。たまに近くに他の個体がいるときは、個体間の距離とかをやはり5分ごとに記録していて……」

1分ごとに行動を記録する。それを8時間。オランウータンの調査には忍耐力が必須だ。(写真提供:川端裕人)
1分ごとに行動を記録する。それを8時間。オランウータンの調査には忍耐力が必須だ。(写真提供:川端裕人)
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 こういったことは、基本的な部分だけれど、しかし、それでも充分に慌ただしい。オランウータンが休んでいる時でも、記録は「rest(休み)」だけでなく、姿勢も記入しなければならないのだから、記録している人たちは「休み」にならないわけだ。

 さらに! 何か特別に調べたいことがあれば、調査の項目が増える。たとえば、寄生虫の研究や腸内細菌の研究をするなら、落ちてきたフンを拾って集めるし、ホルモンを調べたければ尿を採集することになる。

 尿についていえば、これも樹上で放出するので、まるでシャワーみたいに落ちてくる。これはぼくも久世さんと一緒に森を歩いた時に見たことがある。高さが30メートルくらいになると、途中の葉っぱに当たって落ちてこず、まさに雲散霧消してしまうことすらある。地上までちゃんと届いてスポイトで吸い取ることができる機会は限られており、1ミリリットル採集できれば大成功だ。

眠気との戦い

 これだけやることがあるのだから、終始大忙しで休む暇もないわけだが、それでも、実はやはり「待ち」の時には、作業が単調になりがちで、眠気との戦いがやってくる。

「皆、朝5時にはもう現場にいるわけで、早くから起きているし、つい寝ちゃうんですよ。記録を取る人は責任もって記録を取っていないといけないんですけど、皆が寝ちゃって気づいたら逃げられるというパターンもあります。私も、一度ありました。調査助手2人と、私、3人ともうとうとしてしまって、気づいた時には、もうそこにいるのかどうか分からないので、きょうはもう帰ろうって……」

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