ボルネオ島というと、熱帯雨林で、生物多様性のホットスポットの印象が強い。とすると、森は原生林で……というふうに考えるのだが、それが、意外に少なくなっている。木材生産の為に森林が伐採されて、その後に植物油生産のためのアブラヤシの大規模農場になってしまうという話もよく聞くから、オランウータンの生息環境は相当、追い込まれている。オランウータンがニュースになる時には、たいてい、森林伐採や火災、密猟などに関連したものだという悲しい現実もある。

 そんな中でも、原生林が残っているダナムバレイは、さぞかしオランウータンたちにとって暮らしやすい、恵まれた環境にあるに違いない。

一斉結実

「ところが、食物環境については、今のオランウータンの生息地では一番厳しい場所です。もともと、ボルネオ島って、土壌の栄養分が豊富なスマトラ島より、果物が手に入らない時期が長いんです。一斉結実っていって、森の中でも多いフタバガキ科を中心に一斉に花を咲かせて実をつけることが、数年に1回あるんですけど、その豊作の年とそうじゃない年との差がものすごく大きいんです」

ダナムバレイの森。ぼくはボルネオ島のダナムバレイを2010年に訪ね、一緒にオランウータンを追う貴重な体験をさせてもらった。(写真提供:川端裕人)
ダナムバレイの森。ぼくはボルネオ島のダナムバレイを2010年に訪ね、一緒にオランウータンを追う貴重な体験をさせてもらった。(写真提供:川端裕人)
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 原生林でありオリジナルな環境だと想定されると同時に、ある意味、極端な環境でもある。それが、ダナムバレイの特徴だ。

 そして、そこにオランウータンたちが住んでおり、今も昔も変わらぬ生活をしている(と想定できる)、ということなのである。

 久世さんたちが、フィールドにいる間、どんなふうにオランウータンの観察をするのだろう。それを追ってみよう。

ダナムバレイの地図。森林保護区だが、一般向けのツアーも開催されている。(写真提供:川端裕人)
ダナムバレイの地図。森林保護区だが、一般向けのツアーも開催されている。(写真提供:川端裕人)
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