ぼくは、久世さんらが開いたフィールド、ボルネオ島のダナムバレイを2010年に訪ね、一緒にオランウータンを追う貴重な体験をさせていただいた。現場にいる時は、目の前のことに夢中になって、とにかく初めて見る野生のオランウータンのことでいっぱいいっぱいになったけれど、帰国してからはもうちょっと俯瞰してみたくなった。

木の上でお一人様

 その後、ずるずると時間ばかりがたってしまったのだが、このたびやっと機会がめぐってきた。つくば市にある科博の筑波研究施設を訪ねて、たっぷりとお話を伺うことができた。

国立科学博物館人類研究部に所属する久世濃子さん。
国立科学博物館人類研究部に所属する久世濃子さん。
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 まず、大づかみなところからいこう。

 オランウータンって、どんな動物だろう。

 現生では4種類いる大型類人猿の中で、唯一、アジアに生息するオランウータンは、アフリカの3種類(ゴリラ、チンパンジー、ボノボ)とどんなふうに違っているのだろうか。

「群れをつくらない孤独な類人猿、とよく言います。それから樹上性、であるということも特徴ですね」

 久世さんはまず、2点を強調した。

 群れを作らない、孤独な、大型類人猿。そして、樹上性。

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 いわば、木の上でお一人様。

 というのが、オランウータンについて、本質的なところらしい。

「基本、サルは群れで暮らしていて、昼間に活動する霊長類のなかで単独性なのはオランウータンだけなんです。あと、あまり知られていないんですけど、樹上で生活がほぼ完結している動物のなかで、一番体が大きいのがオランウータンです。オスだと体重80キロとか、メスでも45キロとかになるので。そんな大きな樹上性の動物、今はほかにいないんですね。なので、そこが特徴ですね」

 大型類人猿の中での比較というよりも、むしろ、もっと大きく霊長類レベル(単独性)、すべての生き物レベル(樹上性)で突出した存在ということもできるらしい。

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