前述の通り、今、火星にはオポチュニティとキュリオシティという2つの火星ローバーが現役で活躍している。オポチュニティは、2004年に火星に着陸したマーズ・エクスプロレーション・ローバーBの愛称で(ちなみに、ローバーAは「スピリット」。すでに活動を停止)、10年以上にわたって地質学的な探査を続けている。

オポチュニティの想像図。2004年に着陸。(Image:NASA/JPL/Cornell University, Maas Digital LLC)

 一方、キュリオシティは、マーズ・サイエンス・ラボラトリー、つまり「火星科学実験室」と呼ばれる計画によって送り込まれたローバー。900キログラムもの重量を持つ移動実験室として、地質学的な探査に加えて、「微生物が棲めるかどうか」(平たく言ってしまえば「生命が居住可能かどうか」)を調べている。

2015年10月6日にゲール・クレーターのシャープ山で撮影したキュリオシティの自撮り画像。キュリオシティは2012年に火星に着陸した。(Image:NASA/JPL-Caltech/MSSS)

 小野さんがかかわる「マーズ2020」は、このマーズ・サイエンス・ラボラトリーの後継計画だ。名前の通り2020年の打ち上げを目指しており、ほぼ同じサイズのローバーを火星に着陸させて運用することになっている。

「実は、マーズ2020の中でも、タスクを2つやっていまして、そのうちの1つが、火星ローバーの自動走行アルゴリズムをもっと賢くする仕事です。最近、自動運転って地球でも非常に盛んに研究されるようになってきましたよね。あれって、火星ではもう10年前からやってるんですよ」

 ああ、なるほど。火星と地球の間の通信にはかなりのタイムラグがある。近い時で4分、遠い時は40分だったっけ。自動運転できないと困るわけだ。

搭載予定の分析機器「スーパーカム」を使って地質の化学的性質を調査するマーズ2020ローバーの想像図。6輪の基本構造はこれまで同様だ。(Image:NASA)

自動と手動

「あ、でも自動運転が当たり前ということではなくて、今までのミッションでは、ほとんどの距離は、実際は『手動運転』で走っています。1日にだいたい2回、通信のチャンスがあるので、例えば夕方、それまでに撮った画像を全部おろして、地球上にいる人間が次はどういう経路を進もうかと決めて、ここを何メートル進んで、ここを何度曲がって、と全部指定してしまうんですね。これをマニュアルモードと呼んでいて、使える時にはこっちを使います。今のところはそのほうが安全ですから。ただ、画像を見て判断しようにも、遠いところはよく見えないじゃないですか。あとは丘の向こうに行こうと思ったら、そこは写っていないし。そうなると、今度はどこに行けっていう指示だけ出して、危険とわかっている場所があれば、そこには行くなっていう指示もだして、あとはローバーが自分で経路を決めて運転する、自動運転モードに切り替えるんです」

 というようなさじ加減で、人間の具体的な指示による「マニュアルモード」と、ローバーが自律的に判断して目標までの経路を考える「自動運転モード」が混在しており、現状ではまだ「マニュアル運転」が基本なのだそうだ。

 しかし、遠からず状況が違ってくる。