「量子波」の顕微鏡という超最先端な香りが漂ってくる代物と、かざらない(というか、気風がよすぎる)語り口。そして、なんかしょぼい(失礼!)印象もある小規模波力発電。

 こういった「ギャップ」の印象は、新竹さんから頂いた業績のリストを見ていると、さらに深まる。

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「いやあ、まあ、そういうこともやってましたね。だいたい忘れましたけど」と韜晦(とうかい)するのだが、何ページかにわたるリストは、大学院時代の「熱電子銃の開発」「マイクロ波アンジュレータの開発」「電波、熱輻射、放射光などの動きを見るソフトウェアRadiation2Dの開発と公開(1万5000本以上ダウンロードされた)」を皮切りに、主に加速器を使った素粒子実験や、X線自由電子レーザーなるものの開発に多くの時間を費やしてきた。日本加速器学会奨励賞や欧州物理学会 Gersch Budker Prizeなど、国内外で多くの賞も受賞している。

 これまたなにやら、かなり最先端的な香りを漂わせる王道物理学の研究履歴だ。

 どれかひとつ、自分が一番満足できた業績は何ですかと聞くと、ニコニコしながらこう答えた。

「うーん。全部、楽しみ過ぎちゃって満足してるし、あんまり考えたこともなかったなあ」

新竹モニターとは

 たしかに、自分で業績に順番をつけろと言われても、困るというのは分かる。方針変更をして、ぼくはリストの中の、ある文字列を指差した。

「この新竹モニターってなんでしょうか」

 つまり新竹さんの名前を冠した装置があるのだ。

 リストの説明によれば、まさに加速器学会奨励賞を受けた業績で、「1995年、米国カリフォルニアのスタンフォード線形加速器センターSLAC(現 SLAC国立加速器研究所)で60ナノメートルのビームサイズ測定に成功。将来構想であったリニアコライダー計画が現実のものとして浮上し、各研究所間の競争が激化した」という。

「あれ、そんなのあったのかな?」と新竹さんはさらにとぼけてみせる。自分の名前がつくほどの装置で、加速器の世界でも大きなブレイクスルーであったことは間違いない。なにしろ、それによって、日本の岩手県に建設されることが有力視されている国際リニアコライダー(ILC)の計画が現実味を帯びたというのだから。

 もうここまで来ると、ぼくもおかしくなっていっしょに笑うしかなかった。

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