ここまで聞いて、また疑問を抱いた。

 X線レーザーの利用価値がこれまでにない小さな構造物の直接観察、それも3Dデータの取得だとしたら、その目的は新竹さんが今沖縄で取り組んでいる「量子波光学顕微鏡」と変わらないではないか!

安く小さく

「まさにそうです。兵庫県のSACLAは、X線レーザーを当てて散乱させて、計算して元の状態に戻して見るやり方で、世界に類のないものができました。でも、問題があってですね。とても大きな装置で、何百億円もするわけです。1本しかないから、一度に出来る実験は一つだけ。みんな使いたくて、行列になるでしょう。だから、何か工夫して、安く小さい装置でこれと同じようなことができたらいいよねと。で、私たち、今ここでその装置をつくってます。ギュッと小さくしたものだから、私はコザクラって呼んでます」

 新竹さんが取り組んでいく量子波光学顕微鏡というのは、超小型版のSACLA(サクラ)で、新竹さんの個人的なコードネームはコザクラ!(正式なものではない。念のため)。

 さて、色々なものが繋がり始めた。

 物心ついた頃がから、モノを「ゼロから」作り始めてきた新竹さんの履歴は、実はとても必然性に満ちて「繋がって」いるものだったのだ。

いよいよ量子波光学顕微鏡のある実験室へ。

つづく

(このコラムは、ナショナル ジオグラフィック日本版公式サイトに掲載した記事を再掲載したものです)

新竹積(しんたけ つもる)

1955年、宮崎県生まれ。沖縄科学技術大学院大学教授。量子波光学顕微鏡ユニット代表。工学博士。1977年、九州大学工学部応用原子核工学科卒業。1983年、同大学院工学研究科で博士号を取得。同年から2001年まで高エネルギー加速器研究所に所属し、トリスタン計画、B-ファクトリー計画、スタンフォード線形加速器センターSLAC(現 SLAC国立加速器研究所)、理化学研究所のX線自由電子レーザー施設SACLAなどの開発に携わり、理化学研究所を経て、2011年から現職。US Particle Accelerator School Award、日本加速器学会奨励賞、RIKEN技術貢献賞、FEL Prize、欧州物理学会Gersch Budker Prize、応用物理学会光・量子エレクトロニクス業績賞など、多数の賞を受賞している。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社文庫)『天空の約束』、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)など。近著は、知っているようで知らない声優たちの世界に光をあてたリアルな青春お仕事小説『声のお仕事』(文藝春秋)と、ロケット発射場のある島で一年を過ごす小学6年生の少年が、島の豊かな自然を体験しつつ、夏休みのロケット競技会に参加する模様を描いた成長物語『青い海の宇宙港 春夏篇』『青い海の宇宙港 秋冬篇』(早川書房)。
本連載からは、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめたノンフィクション『8時間睡眠のウソ。 ――日本人の眠り、8つの新常識』(日経BP)、「昆虫学」「ロボット」「宇宙開発」などの研究室訪問を加筆修正した『「研究室」に行ってみた。』(ちくまプリマー新書)、宇宙論研究の最前線で活躍する天文学者小松栄一郎氏との共著『宇宙の始まり、そして終わり』(日経プレミアシリーズ)がスピンアウトしている。
ブログ「カワバタヒロトのブログ」。ツイッターアカウント@Rsider。有料メルマガ「秘密基地からハッシン!」を配信中。