「加速器実験で、失敗する場合、原因はなんだと思います?」と謎をかける。

「それはね、電源。本当にトラブルがいっぱい。問題になるのは、ノイズと、発熱と、放電。どれかひとつでも、電源が壊れるんですよ。みなさん、計画について論文はたくさん書いてても、加速器が動かなくてプロジェクトがアウトになっちゃうとかある。電源は縁の下の力持ちなんですけど目立たない。しかし私は電源については、馬鹿みたいに真面目に作ってきました。実はこれ、修士の時にやった熱電子銃と同じ延長線にあるんです。あれも、タングステンのヒーターが切れちゃうというのが、電源トラブルと同じように縁の下の力持ちの問題なんです。私が、作った熱電子銃 、結局、30年以上、現役で使われていますから」

 さらに、新竹さんの思い入れは、熱電子銃の延長にあるX線自由電子レーザー装置についても、とても深い。一連の加速器建設に参加した後で、2001年に理化学研究所に移籍してから、新竹さんが取り組んだのがまさにそのテーマだから。

「兵庫県の佐用町にある理研の放射光科学総合研究センターで、X線レーザーの開発と建設をやりました。これがまたゼロから作るようなもので、電源から始まって、熱電子銃、加速器、すべて、ゼロから。そして電子からX線を取り出すアンジュレータの設計に、博士課程でのマイクロ波アンジュレータを研究した経験が活かされています」

自由電子を発生源に

 このあたりでX線自由電子レーザーとは何者か、簡単に(深入りしたら逆に分からなくなりそうなので、あくまで簡単に)説明しておこう。

 ぼくたちが普通使うレーザーは、固体レーザーにしてもガスレーザーにしても、ある特定の状態になった物質にエネルギーを与えると、レーザー光、つまり位相がきれいに揃った、光のビームが発生する、というものだ。発生したレーザー光の波長は、発生源になる物質によって決まっている。

 X線自由電子レーザーも、レーザーという以上、位相の揃ったX線を得ることができるわけだけれど、その際、発生の仕方が違っている。

 まず、X線自由電子レーザーの発生源は、電子だ。それも、原子の中にあるわけでなく単体で飛んでいる「自由電子」。「X線自由電子レーザー」と書いてしまうと、ちょっとわかりにくくなるのだが、「自由電子」を発生源とした「X線レーザー」ということをまず押さえよう。

 では、自由電子は、どうやったらX線を出すのか(ここはまだ、位相の揃っていない、つまり、レーザーではないX線であることに注意)。それは、電子が速さや運動方向を変えられた時だという。この環境を提供するのが、何度も名前だけ出てきている謎めいた「アンジュレータ」だ。多数の磁石を電子軌道の上下に並べたもので、ここを通る自由電子は磁場の中を蛇行しながら飛びつつ(英語のundulateは、波打たせるとか、蛇行させる、という意味)、X線を出す。最初の段階では、レーザーではないのだが、アンジュレータをいくつもならべて長い距離を飛ばしてやるうちに、発生したX線と、その発生源である自由電子が、相互作用をして、やがて位相が揃ったX線レーザーを得ることができるという。

 このあたりは非常に専門的な部分なので、これだけを読んですっきり分かった!という人はまずいないと思う。興味のある人は独自の探究を! 例えば、なぜ自由電子を蛇行させるとX線が発生するのかなどについては、新竹さんが学生時代に作ったソフトウエア「Radiation2D」をダウンロードして、画面上の電子をマウスで動かして波が発生する様子を体験するとよい。これは新竹さんが博士課程でマイクロ波アンジュレータ(磁石ではなく、マイクロ波で自由電子を蛇行させるさらに先進的な技術だ!)の研究を行った時に作成したソフトだ。単なる概念的なアニメーションではなく、相対性理論を取り込んだ厳密な計算を超高速で行った上で描画している。

Radiation2Dフリーウエアのダウンロードは
http://www.shintakelab.com/jp/jpEducationalSoft.htm