ナノサイズの電子ビーム測定機器の構成。中央の赤い部分が新竹モニターで、上下2方向からのレーザー光を重ねることにより干渉縞ができる。一方、左手前から右奥に向けて、干渉縞を通るように電子ビームを飛ばし、散乱を利用することでそのサイズを測るという仕組み。(画像提供:新竹積)

 干渉縞というのは、高校の物理で習う光学の話だけれど、実に応用範囲が広い。同じ波長で、ちょっと位相がずれた(ちょっと違う距離を飛んできた)光が重なりあうと、二つの波が打ち消し合って弱くなるところと、重なりあって強くなるところが、交互に現れて、縞々模様になる。高校物理でスリットとスクリーンを使った光学実験(ヤングの実験)をして、スクリーンにできる縞模様を観察した人もいるだろう。

「ここでは極限に短い干渉縞を作ってやるんです。で、その中に電子をピッて通すんですよ。干渉縞を作っている光も粒子の性質を持っているので、電子とぶつかるんです。カチン。カチンと。それでぶつかったときに、X線が出てくるんです。コンプトン散乱っていいますが、そいつをはかるんです。それでビームの幅が分かるんです」

 干渉縞の明るいところは光子がたくさんあって、暗いところは少ない。そこに電子が通ると、散乱が起きる。その時、どんなふうに散乱するかを決めるのは、主に、電子のビームの幅と干渉縞の幅だ。干渉縞の幅は自由に制御できるので、結果、電子ビームの幅を見ることができる。

20年後も

 あくまで、これは概略の話。細かく話し始めるときりがなくて、ぼくもついていけない。新竹さんは、このアイデアを実際に使えるものにするまでの間、実に2年半を費やした。それで、実用になることがわかり、20年たった今も、100ナノメートル以下のビームを確認する手段はこれだけだ。地味に思えるかもしれないけれど、これなしには、国際リニアコライダーの計画自体、成立しなかった。実際にILCが建設され運用が開始されると、現場のオペレーターは、まるで音響エンジニアがモニタを聴きながらフェーダーで音量を調整するのと同じように、新竹モニターを見ながらビームの絞り具合を調整して実験をすることになる。

 新竹さんが「そんなのあったのかな」と、さらりと言うのは、同じくらい重要な問題に、他にも関わってきたという自負もあるかもしれない。続く話題で、ぼくはそのように感じた。