「量子波光学顕微鏡」の開発チームを率いて物理学の最先端をゆく一方で、小規模な波力発電にも取り組み、自ら「下町の発明家」のように研究を楽しんでいるという新竹積さん。数々の国際的な賞を受賞する、天衣無縫で自由闊達な世界的物理学者の研究室に行ってみた!

(文=川端裕人、写真=飯野亮一(丸正印刷))

 新竹さんが、子どもの頃から、ごく自然に実践してきた「研究解決」の方法を一言で語るなら「ゼロから作る」だ。

 もちろん、真空管やトランジスタや集積回路があれば使うわけだけだが、なければ作る。ないからといって、そこで立ち止まったり諦めたりしない。物心ついてから体感し続けてきた「物を作る感覚」を研ぎ澄まし、どうやったらできるか考えつくし、さささっとスケッチし、また考え、実現可能なものに落としこむ。お話をうかがうだけで、その柔軟さというか、奔放さに圧倒される。

スケッチを描きながら説明をする新竹さん。

 自身の名がついた「新竹モニター」について、最初、尋ねた時、「そんなのあったのかな」と、とぼけた態度だったけれど、実際、新竹さんが関わってきたことは、ほかにもたくさんあって、意識がそっちに向いていない時に聞いたなら、そういうことになるのかもしれない。

干渉縞とは

 それでも、「3ナノメートル幅の高エネルギーの電子ビーム」をどうやったら測定できるのか、すごく気になるのでうかがった。なにしろ、人類の知的な地平線を切り開いている感のある素粒子物理学の世界で、加速器のビームを数十ナノメートル以下に収束させた状態を見ようとしたら、1995年に新竹さんが開発に成功した(概念の発表は92年)新竹モニターが、2016年現在も、唯一無二の方法だというのだから。当然、国際リニアコライダー(ILC)にも使われる。

 結局、モノで測るのは無理で、レーザーを使うことにしたというところまで聞いた。この後、専門的になると、もうとんでもなく深い世界になってしまうので、思い切り概略を教えてもらった。

 キーワードは、「干渉縞」だ。

「ビームが絞られて通るところにレーザー光を導くんですが、途中にハーフミラーみたいなものを置いて、ルートを2つに分けます。で、違う距離を走ったレーザー光を、電子のビームが絞られて通るちょうどそのところで重ねあわせてあげるわけです。そうすると、干渉縞ができますよね。そこに電子のビームがやってくる。わかります?」

写真中央やや上の縞模様の部分が「レーザー光」による干渉縞。一方、電子ビームは干渉縞を通るように横から飛ばす。