卵を産みおとしてから孵化させるのは、卵生だ。固い殻の中で子どもは卵黄を栄養にして成長する。

 体の中に胎仔が留まるパターンでは、まず、卵黄依存性の胎生がある。これは従来言われていた卵胎生に一番近く、卵を母体内に留めるものの、栄養はあらかじめ与えた卵黄に依存する。ジンベエザメは今のところこれらしい。

子宮ミルク

 卵黄ではなく、母体に依存する場合はどうか。

 まず、卵食・共食い型。

 母体から提供される未受精卵を食べるホホジロザメや、自分よりも後に授精した卵や胚(つまり、弟や妹!)を食べるシロワニなど、えーっと思わされるがよくよく考えると合理的かもしれない方法を取る者たちがいる。

 さらに胎盤を作り、哺乳類(有胎盤類)的な栄養供給する者たちがおり、これは、実はサメの中でもメジャーな繁殖様式だ。

 さらにさらに、マンタを含むエイの中には、胎盤はないものの、子宮壁から高栄養の「ミルク」を分泌して、胎仔はそれを飲むことで大きくなるという、胎内哺乳型(ここで作った言葉で、専門用語ではない)とでも言うべきやり方を取る者がいるというのだ。

子宮のなかでミルクを与えるとは!
子宮のなかでミルクを与えるとは!

 前回は、ここまでたどり着いておしまいになった。驚きのあまり、ちょっと簡単に終わらない予感がしたので、筆を止めた。

 本当に繁殖様式のデパートである。

 だいたい胎内でミルクなどと、オリジナリティが高すぎではないか。

「子宮の壁に、ミルクを分泌する栄養子宮絨毛糸(じゅうもうし)という組織が発達して、栄養の高い脂質を分泌するんです。子宮ミルクです。それをゴクゴク飲んで、比較的短期間に大きくなります。うちの水族館はマンタが毎年繁殖するんですが、妊娠期間は1年間なのに、出産時には体の幅が180センチメートル、体重が70キログラムにもなっているんです」

 さりげなく、沖縄美ら海水族館の実力をほのめかしてあまりある発言だと途中で気づいた。

 というのも、マンタが毎年、繁殖するというのはほかではありえない偉業だからだ。世界的に見ても、マンタの繁殖に成功したことがある飼育施設は、今のところほかにない。それを「毎年」というのである。

 そして、子宮ミルク。

 出産の時の映像を見せてもらったが、これは本当にミルクのようだ。子どもが外に出た時点では、体に白いものがまとわりついていて、それがぱーっと散る。ミルクに包まれてマンタは生まれてくる!

沖縄美ら海水族館の出産直後のマンタ。本当に白い!(写真提供:佐藤圭一)
沖縄美ら海水族館の出産直後のマンタ。本当に白い!(写真提供:佐藤圭一)

国立科学博物館特別展「海のハンター展」開催

(写真提供:日本経済新聞社)
(写真提供:日本経済新聞社)

2016年7月8日(金)から10月2日(日)まで、東京上野の国立科学博物館で、佐藤さんが作成したホホジロザメの全身標本が展示される「海のハンター展」が開催されます。開館時間、休館日ほか、詳細は公式ホームページをご覧ください。

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