まず、卵生のものは、ネコザメ科、一部のテンジクザメ目、ほとんどのトラザメ科が相当し、海中に卵殻に守られた卵を産み落とす。卵殻の形は種によって非常に特徴的で、よく水族館などで展示されているネコザメの卵はまるでドリルのようだ。

左から、ナヌカザメ、ネコザメ、イヌザメの卵殻。(写真提供:佐藤圭一)
トラザメ科のナヌカザメ。卵を産むタイプのひとつ。(写真提供:佐藤圭一)
こちらはバックヤードで飼育中のトラザメ。成魚でも最大50センチほどと小柄で愛嬌のある顔立ちをしている。
トラザメは卵殻も小さい。

子宮とは

 ところで、普通の魚(硬骨魚類)なら、メスが産卵したところに、オスが精子を放出して海中で受精させることが多いわけだが、サメやエイなどの軟骨魚類は交接器を持っており、受精が母体内で起きる。その点で、むしろ、「我々」に近い。卵生のものは、母体から切り離された卵殻の中で子どもが育つのだから、当然のごとく卵黄依存型だ。子どものお腹からつながった外卵黄嚢という袋(ヨークサック)に大量の卵黄を持っており、孵化するまでその栄養で成長する。

トラザメの仔魚と外卵黄嚢(ヨークサック)。中には栄養となる卵黄がたっぷり入っている。(写真提供:佐藤圭一)

 そして、次に「卵黄依存型胎生」というものがある。

 これは、卵が母体内にとどまりつつも、栄養的には卵殻の中の卵黄に依存して成長するタイプだ。いわゆる「卵胎生」のイメージに一番近い。サメの中の様々な分類群で、このやり方をとる種がおり、実はジンベエザメもそうだと今のところ想定されている。「台湾の写真」にあった300個体もの胎仔も、2つある子宮に分かれてぎっしり入っていた。ヨークサックの大きさが違うものが混ざっていたため、一度にではなく順を踏んで、連続的に排卵・受精が続いたと考えられている。

 以上が、卵黄依存型の2パターン。

 考えてみたら、これまでぼくがサメの繁殖として理解していた、卵生と卵胎生というのは、ここまでで尽くされてしまう。しかし、実際には、サメは母体内で胎仔を保育するものがとても多いというわけだから、まだまだ先があるのだ。

 ところで、ジンベエザメの子宮ってなんだろう? 「魚に子宮とは?」と違和感を抱いた。

「サメの子宮というのは、もともと卵を輸送する輸卵管(ゆらんかん)の一部が変化したものです。硬骨魚類にも輸卵管はあるんですが、子宮とは言いません。胎生のサメに対して子どもを身ごもる場所として子宮と呼んでいて、サメの場合も、卵殻を排出するサメに対しては、子宮とはあまり言わず、やはり単に輸卵管です」

 人間を含む哺乳類にも輸卵管があり、子宮がある。ただし、進化の歴史の中で、サメとはかなり古い時代に分岐しているわけで、それぞれ独自に輸卵管を子宮に発展させたのだろうと想像がつく。

 では、子宮の中で、どんなふうに保育するのだろうか。

佐藤さんの実験室。繁殖生理の研究には、解剖や組織の分析などは欠かせない。ほかではなかなか入手できないサンプルがたくさん保管されている。

国立科学博物館特別展「海のハンター展」開催

(写真提供:日本経済新聞社)

2016年7月8日(金)から10月2日(日)まで、東京上野の国立科学博物館で、佐藤さんが作成したホホジロザメの全身標本が展示される「海のハンター展」が開催されます。開館時間、休館日ほか、詳細は公式ホームページをご覧ください。