「両方とも、今、ほとんど見つからないサメなので、やはり謎ですね。ウバザメはジンベエザメよりも、もっと数が少なくて、昔は日本でもたくさんいたんですが、もう全然、今は見かけない。これは明らかに数が減っていると思います。オンデンザメも、ほとんど今、捕れない。やっぱり、そういう超大型のサメを研究するのは難しいです。例えば大学の研究者なら、ある程度短い期間で成果を求められるので、次、オンデンザメがいつ捕れるかなんて全然分かりませんって状態でなかなか研究の対象にできないです。ましてや、妊娠してるオンデンザメをサンプリングするのは、もう、気長に10年待ってできるかどうかという話になりますから」

 急にジンベエ研究が、謎の度合いが、まだ希望の持てるものに思えてきた。というのも、ジンベエザメは、行く所に行けば観察できるわけだし、水族館でも飼っている。現にぼくが佐藤さんと話していた研究センターの一室から数百メートル離れた沖縄美ら海水族館の大水槽には、3匹のジンベエザメがいる。

「ジンベエザメの繁殖について一番直接的に調べるには、飼育して、飼育下で繁殖することなんですよね。我々は今、それに挑戦してるんですけれども。今3匹いるうちの1匹がオスでして、3年ほど前に成熟に至りました。オスの場合、比較的分かりやすくて、まずクラスパー、つまり交接器が二次性徴とともにバーッて急激に長くなるんです。その過程を追えたということと、あとテストステロンっていう性ホルモンの値が急激に上昇したんですね。これはもう、間違いなく成熟しているだろうと。実際に性行動も多少見られるようになりました。それで、今、メスを待ってる状態なんですが、メスの成熟過程は、外見上、あまりわからないんです。それをどうにか血液から成熟判別したいと思っています」

まずトラフザメで

 とはいえ、ジンベエザメのメスの血液中のホルモンと性成熟の関係など、いまだ誰も見たことがないわけで、ただ定期的に採血できたとしても、心もとない。そこで、系統的に近く、飼育繁殖技術が確立しているトラフザメのメスを綿密に観察しているそうだ。まだ論文として公開される前の研究だが、概略を教えてもらった。

トラフザメも「黒潮の海」大水槽にいる。(写真提供:佐藤圭一)
トラフザメも「黒潮の海」大水槽にいる。(写真提供:佐藤圭一)

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