ジンベエザメは、アグリゲーションといって、豊富なプランクトンが湧く海域に、たくさんの個体が毎年、同じ時期に集まってくる現象があって、そういった海域が世界各地でいくつも見つかっている。残念ながら、日本近海では今のところ見つかっていないのだが。

「未確認動物」

こちらは「黒潮の海」のアクアルーム。
こちらは「黒潮の海」のアクアルーム。

 とにかく、ある特定の海域に特定の時期に赴けば、比較的、野生のものが観察しやすい。肉食ではないので、水中で観察するのも安全だ。国際ジンベエザメ会議が開かれるほど、関心をもつ研究者も多い。オーストラリアや東南アジアでは、観光としても人気が出ていて、毎シーズン、多くの観光客がジンベエザメのそばを泳ぐところもある。それなのに、誰一人として、妊娠しているジンベエザメも、交尾しているジンベエザメも見たことがないのだという。本当に、謎に次ぐ謎!

「ジンベエって、もっともミステリアスなサメ、というわけですね!」と興奮して言ったところ、「その通りです」と佐藤さんはうなずいた。

 でも、すぐに付け加えた。

「でも、サメはだいたい分かっていないものの方が多いですね。シンベエばかりではなく、とてもミステリアスです。そもそも、ほとんど見つからないサメで、飼育もされていなければ、本当にわからないですから」

 ああ、なるほど。

 ぼくがふと思い浮かべたのは、例えば、ウバザメ。ジンベエ同様、プランクトン食の巨大なサメで、一昔前、死んで漂流しているものを漁船が見つけて、首長竜の死体だ! などと騒ぎになったことがある。死んだ後で、顎が外れて、そのように見えていただけと後に分かったけれど、自分の子ども時代にちょっと心ときめかされた「未確認動物」の正体である。

ウバザメの頭部。エラを開いて内側を見せている。ジンベエザメに次ぐ大型の魚類で、体高より大きく口を開けて、エラの内側にあるこし取り器で餌を採る。ウバザメの写真は<a href="http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/062500159/" target="_blank">こちら</a>にも。(写真:ナショナルジオグラフィック日本版編集部)
ウバザメの頭部。エラを開いて内側を見せている。ジンベエザメに次ぐ大型の魚類で、体高より大きく口を開けて、エラの内側にあるこし取り器で餌を採る。ウバザメの写真はこちらにも。(写真:ナショナルジオグラフィック日本版編集部)

 また、オンデンザメ。寒冷な北極海の大型のサメで、とにかく動きがのんびりしていることに本連載でもインタビューしたことがある渡辺佑基さん(国立極地研究所)が興味を持っており、実際に大西洋のニシオンデンザメの調査に出向いていた。ウバザメもオンデンザメも、超大型のサメなので、生き物好きの間でカリスマ的な人気があるが、しかし、野生で見たことがある人はほとんどいないだろう。

国立科学博物館特別展「海のハンター展」開催

(写真提供:日本経済新聞社)
(写真提供:日本経済新聞社)

2016年7月8日(金)から10月2日(日)まで、東京上野の国立科学博物館で、佐藤さんが作成したホホジロザメの全身標本が展示される「海のハンター展」が開催されます。開館時間、休館日ほか、詳細は公式ホームページをご覧ください。

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