動物研究室の室長でサメ研究のリーダーでもある佐藤圭一さんにお会いして、まず最初に問いかけた。
御三家とともに
「サメによる被害は増えているんでしょうか。とすると、サメが増えているんでしょうか。我々は、何に気をつけなければならないでしょうか……」

佐藤さんが瞬間的に浮かべた、ちょっと困った表情が忘れられない。「やれやれ」という雰囲気だったかもしれない。それでも、すぐににこやかに説明をしてくださった。
「人を攻撃するサメといえば、ホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメというのが御三家です。イタチザメ、オオメジロザメは、南のほうに限られているので、沖縄であれば1年中、その3種類のサメが分布してますし、本州ですと、年中遭遇しうるのはホホジロザメだけ、ということになります。我々、みんな生きたものを見たことがありますが、ホホジロザメは体の大きさといい顎の分厚さといい、別格の捕食者だと感じます。目つきもほかのと違うんですよね」

ホホジロザメは、沖縄から本州、北海道まで、出くわす可能性のあるサメだという。そして、イタチザメ、オオメジロザメは、あたたかい水域のみで、沖縄なら常に見られる。つまり、沖縄には、「御三家」が揃う、日本ではまれな海があるのだ。
「でも、沖縄での事故ってそれほど多くないんですよ。沖縄はリーフが発達していて、海のレジャーがその内側でするものが多いのと、あと、サーファーの数もそんなに多くはない。それで、おそらく遭遇する確率も低いのかなと思ってます。少なくとも被害が増えているというかんじではないですね。これは、日本全国でも、国際的にも同じです。年によってばらつきがありますが、長期トレンドとして増えているというふうには読めない」
もちろん、事故がまったくないわけではない。漁師、ダイバー、サーファー、海にかかわる人たちが、サメに襲われる事故は、沖縄ではしばしば起きる。いや、日本の他の場所でも、世界中どこでも起きている。かといって劇的に「増えている」という話でもなくて、ぼくの質問は、どうやら、ちょっとピントのずれたものだったらしい。

2016年7月8日(金)から10月2日(日)まで、東京上野の国立科学博物館で、佐藤さんが作成したホホジロザメの全身標本が展示される「海のハンター展」が開催されます。開館時間、休館日ほか、詳細は公式ホームページをご覧ください。
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