この件、何度でも強調した方がいいかもしれない。

 1981年のザッカーマンらの古典的なレビューを経て、2006年のメタ分析では、より広範に嘘と行動の関連について206の論文を精査しており、その結果も、正答率はせいぜい50パーセントを超えるくらいだった。偶然、嘘か本当かを当てるよりは少しはまし、程度。「人間は嘘発見が苦手」と言われても仕方ない。

『嘘と欺瞞の心理学 対人関係から犯罪捜査まで 虚偽検出に関する真実』(福村出版)。村井さんも翻訳に携わった。

 ちなみに、2017年現在、嘘に関する成書としては最も広範で優れたものだと評価されているアルダート・ヴレイの『嘘と欺瞞の心理学 対人関係から犯罪捜査まで 虚偽検出に関する真実』(原著は2008年、邦訳は2016年、福村出版。訳は村井さんらによる)でも、視線と嘘にまつわる問題が議論されている。「2つの特筆すべき知見」として取り上げられたうちの1つが視線と嘘にまつわるものなのだ。

「ヴレイは今の嘘研究でトップランナーの一人なんですが、その人にしてやはりストライキング(特筆すべき)だという知見が2つ挙げられているわけです。1つは、視線と嘘には関係がないということ。考えられる理由として、視線を使ったコミュニケーションは使い慣れているので、意識的にコントロール可能だからではないか、また、視線は嘘と関連しない他の要因ともいろいろ関わっているから、嘘との関係が出にくいとも」

 1980年代早々から現代に至るまで一貫して言われ続けたことなので、そろそろ、「視線は関係ない」と結論してもいいのだろう。かといって、視線以外の行動の観察が役に立つかというと、それも心許ないというのが今の最良の知見だ。

 ではさらに、ヴレイが挙げた特筆すべき知見のもう1つはなんだろう。視線と嘘という、我々人間社会に洋の東西を問わずひろがった信念を打ち砕くのに匹敵するものだから、とても驚かされるようなものだろう。