「嘘の心理学」の専門家として知られる村井さんは、こういった実験を通して、学生さんたちに心理学の研究法を教示する。実験を計画し、呈示する映像をつくり、実験をして、得られたデータについて分析をした上で結論を下す。研究のイロハは、実際に自分たちでやってみてこそ身につくものだ。

 その一方で、ぼくはといえば、この映像を何度か見せてもらいつつ、顔ではない他の動きに注目しようとしたり、表情に影響されずただ声のトーンや話し方だけを判断基準にできないかと頭の中で操作する努力を繰り返した。でも、結局、何度やっても、顔ばかり見てしまった。リアルに対面しているなら、視線を外すのは失礼にあたるかもしれないから、そういう反応も分かるのだが、映像でもそうなのだった。

嘘の心理学を専門とする村井潤一郎さん。

 さて、前回から続いて、視線やその他の「非言語的行動」から嘘を見破る話。

 2006年の国際的な調査で、対象になった世界58カ国の人たちの多くが「嘘つきは視線をそらす」と信じていると明らかになった。

 日本でも嘘と視線の関係を信じている人は多いのではないだろうか。ウェブで「嘘の見破り方」などと調べると、「嘘をついている時、右利きの人は自分の左上を見る」「まばたきが多くなる」「アイコンタクトの時間が普段よりも長くなる(短くなる)」等々、さまざまな説が語られている。

 その一方で、「顔はあてにならない」と主張するウェブサイトもあって、その場合、役に立つのは顔以外の動きで、たとえば、足だという。足をひっこめるような仕草は嘘の徴候だとか。また、手で鼻や顎や髪に触れる仕草も要注意!

「研究はたくさんあって、どのような実験状況にするか、何を指標にするかというのは様々です。たとえば嘘をついている時に発言時間が増えるという研究結果があれば、発言時間が減るという研究結果もある。研究の結果が反対になることは、実は意外に多いんです。こういうことを、テレビに出る人は言いませんよね。実際の実験では、『目が泳ぐ』かどうか検討するには、実験参加者が嘘を言う時に聞き手とアイコンタクトを築こうとする時間や頻度を見て、それを本当のことを話している場合と比較することが多いですね」