「バイオマスから作った生分解性プラスチックを使って、使った後は堆肥化するのが一つの方法です。流通の仕組み、あとは包装の仕組みも考えていくということで、大きな話になるんですが、それを今からやらないと手おくれになりますので。現時点ではこういうことを議論するのは、国内では環境省なんですけど、そろそろ経産省も含めたもっと大きな枠組みで、プラスチックを循環型経済の中に組み込んでいく流れにしなければと思います」
高田さんは、最近、あるメーカーがデンプンから作ったという試作品の生分解性プラスチックシートを見せてくれた。ちょっとごわっとしていたが、十分な強度を持ったプラスチックの手触りだった。こういったものが普及すれば、従来よりは多少性能は悪くとも、十分、代替になるのは分かる。

ただ、気になることがある。生分解性のプラスチックは、バイオマス、主に植物から作ることを想定しているわけで、はたして、結果的に、今度は森林問題や農業の問題を引き起こすことにつながらないだろうか。
「それがですね、使い切れていないバイオマスの資源として、セルロースがかなりポテンシャルがあるんです。例えば、トウモロコシの茎ですとか、食料生産を圧迫しないものに注目して進めていけば、食料生産とはぶつからないし、森林破壊ともぶつからないようにできると思います。そして、利用後にちゃんとコンポスト化して農地に戻せば、物質循環もぐるりとまわり、温暖化ガスは出さずにすむわけです」
というわけで、高田さんの頭の中には、新しい時代の循環型経済まで思い描かれているのだった。本稿で扱うにはあまりに大きすぎる話題なので深追いしないが、構想の力強さに感じ入ることしきりだった。

つづく
(このコラムは、ナショナル ジオグラフィック日本版サイトに掲載した記事を再掲載したものです)
本連載からは、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめたノンフィクション『8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識』(集英社文庫)、宇宙論研究の最前線で活躍する天文学者小松英一郎氏との共著『宇宙の始まり、そして終わり』(日経プレミアシリーズ)がスピンアウトしている。
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