21世紀に入り、生産量が激増しているプラスチック。便利さの一方で、大量のプラスチックが海に流出し続け、近年は5mm以下の「マイクロプラスチック」にも大きな注目が集まっている。そこで、マイクロプラスチック汚染について早くから研究を続けてきた高田秀重先生の研究室に行ってみた!
(文=川端裕人、写真=内海裕之)
マイクロプラスチックによる海の汚染は、今注目される環境問題というだけでなく、人類史どころか、地球史上にも刻み込まれるであろう事象だ。
ことの大きさに戸惑うばかりだが、そこで、知っておかなければならないのは、「ぼくたち」がどんな影響を受けるかということだ。マイクロプラスチックが世界中に広がっている現実は、単純に考えても、気持ちがよいことではない。しかし、それだけならば単に「美的な感覚」にすぎないだろう。
最大の論点は、健康への影響だ。マイクロプラスチックが世界にあふれるのを放置したら、どんな健康被害が想定されるのだろうか。
「まず、人間というより、生物への影響ですが、2つの側面があると思います。プラスチック自体が物理的異物であることによる影響が1つ目。2つ目は、添加剤やプラスチックに吸着した化学物質による影響です」

それぞれ、見ていこう。
「まず、物理的な面ですが、小さな生物については、マイクロプラスチックが物理的異物として働く(粒子毒性)可能性がまず考えられます。ポリスチレン微粒子の曝露(ばくろ)により牡蠣(カキ)の再生産能力が低下したりすることが報告されていますし、ナノサイズ(20nm)のプラスチックが細胞膜を通過して生物組織へダメージを与えることも示唆されています」
ナノサイズのプラスチック! マイクロプラスチックはミリサイズのものが最初に認識されたわけだが、現在ではもっと小さなナノサイズのものを考慮しなければならないところまで来ている。
「化学的には、メダカに汚染物質が吸着したマイクロプラスチックを砕いて与えると、メダカの肝機能に障害が出たり、肝臓に腫瘍ができるというようなことが実験的に確かめられています。野生でも、プラスチックを摂食した生物体内への有害化学物質の移行が懸念されていて、ごく最近、ベーリング海のハシボソミズナギドリの脂肪へPCBなどが蓄積されているのが確認されました」
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