「東京湾の堆積コアではコアの下の方から上の方へ向かって、プラスチックの数が増えていきます。つまり、過去から現在に向けてプラスチックの汚染は進んでいることが分かります。ただ、東京湾は底引き網で海底がかき混ぜられることがあるので、そのプラスチックがいつたまったものなのか正確に分かりません。そこで水底が人によってはかき混ぜられない皇居の桜田濠での調査をしました。これと合わせてみるとさらに傾向がはっきりします。桜田濠の一番下の層は江戸時代に相当しますが、プラスチックは見つかりません。1950年に相当するあたりから少しずつプラスチックが出てきて、2000年くらいだと最初の頃の10倍くらいに量が増えています」

桜田濠のマイクロプラスチックの年代別個数。(画像提供:高田秀重)

 こういうふうに年月ともにどんどんプラスチックが増える現象は、東京だけでなく、南アフリカのダーバン、ベトナムのトンキン湾、タイのタイランド湾でも、高田さんたちが確かめた。マイクロプラスチック汚染が、20世紀から始まった世界的な現象であることは、もう疑いの余地がない。

南アフリカ、ダーバンのダーバン港で堆積物を採取する高田さん。(写真提供:高田秀重)

 さらに、泥の中の有害物質の変化も追うことができる。

「注目してほしいのがPCBです。PCBは1950~1960年代の高度経済成長期に工業用の油として広く使われていたわけですが、1970年代の初めに毒性を持っていることが明らかになって、今は使用が禁止されています。ですので、コアの中のPCBは、1950年代にあらわれて徐々に濃度が上がり、1970年代にピークになった後で、減っていきます。これは、PCBの使用の歴史をよく反映しています。ところが、使われなくなった後も、決してゼロにはならないんです。ピークは表面から25センチくらいのところですが、海底がかき混ぜられるとまた表面に出てきてしまいます。こういうのを『レガシー汚染』と言います」

 一度、放出してしまったら長い間、付き合わざるを得なくなる事例だ。

ガーナの首都アクラの砂浜でマイクロプラスチックを採取。この地点は世界的に問題となっている電子機器廃棄処理場(Agbogbloshie e-waste)の下流に位置し、プラスチックから高濃度のPCBが検出された。(写真提供:高田秀重)