ひとつ注意しておきいたのは、これらは外に出た段階で、すでに「マイクロプラスチック」だということだ。「一次的マイクロプラスチック」という言い方もあり、洗顔料・歯磨き粉に使われるスクラブ剤(目に見えないほど小さいので、マイクロビーズと呼ばれることもある)もまさにそうだ。
本稿では、環境中で小さくなる「二次的マイクロプラスチック」を中心に話を進めているが、「一次的マイクロプラスチック」も、起源が違うだけでやはり深刻な海のプラスチック汚染のサブジャンルだ。世界的にも注目されており、化粧品などにスクラブを使わないようにする規制はあちこちで行われるようになっている。
そして、レジンペレットは、本当に世界中であまねくみつかることや、封筒などに入れて送りやすいことなどから、地球規模のモニタリングに適している。高田さんたちの「インターナショナル・ペレットウォッチ」が大切になってくる所以だ。

閑話休題。
プラスチックが見つかる場所が広がり、それらが「マイクロ化」している現況も把握された頃から、生物にどれだけ取り込まれているかという報告が相次いで寄せられるようになった。小さなものだから、そのまま体内に入ってしまうケースが想定され、実際に探してみたら、つぎつぎと見つかるようになった。
「20世紀には、比較的大きな動物、クジラであるとかウミガメからプラスチックが見つかっていたわけですが、少しずつ小さな動物でも見つかっていきます。たとえば、亜南極オーストラリアのマッコーリー島で、オットセイが食べているものを見るためにフンを観察していたら、魚の骨のじゃなくてプラスチックがあったと。これが2000年代の初め頃です。同時期に、ミッドウェー島のアホウドリでも見つかりました。私たちも北海道大学の綿貫豊教授との共同研究で、ハシボソミズナギドリという渡り鳥の消化管の中にマイクロプラスチックがあるのを確認しています。この鳥は、南はタスマニアから、北はベーリング海まで、赤道を越えて渡りをする希少な海鳥で、汚染物質の影響も受けやすい鳥になるわけです。そして、今ではカタクチイワシですとか二枚貝ですとかからも見つかるようになっています」

日本の周辺海域についてのマイクロプラスチックの現状把握は、2014年に環境省が行っている。プランクトンネットを船で引っ張ってサンプリングしてまわった結果、1平方キロメートルにつき、172万個のマイクロプラスチックが浮遊しているという結果を得た。これは北太平洋の平均の16倍、世界の海の平均の27倍だという。ぼくたちはマイクロプラスチックのホットスポットに囲まれて暮らしている。

つづく
(このコラムは、ナショナル ジオグラフィック日本版サイトに掲載した記事を再掲載したものです)
本連載からは、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめたノンフィクション『8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識』(集英社文庫)、宇宙論研究の最前線で活躍する天文学者小松英一郎氏との共著『宇宙の始まり、そして終わり』(日経プレミアシリーズ)がスピンアウトしている。
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