さて、それでは、カタクチイワシの消化管から見つかったマイクロプラスチックはどういうルートでここまで来たのか。東京湾の話だから、東京、千葉、神奈川など、東京湾に面した地域から出たもののはずだが、こういった地域では、基本的にはプラスチックゴミは、収集・処理されているはず。ポイ捨てされたものだけで、「8割のカタクチイワシ」に行きわたるものなのだろうか。いや、そもそも、どうやったらこんなに小さく揃ったプラスチック片ができるのだろう。

「よく説明するのに使うのはこういうものです」

 高田さんは、色あせた古いプラスチックの塊を差し出した。見慣れた洗濯バサミだ。

高田さんは洗濯バサミを手に解説し始めた。

「例えば、洗濯バサミも、外で1年も使っているとポキッと折れやすくなりますよね。1年間、太陽の光にさらされて、紫外線の力でこうやって壊れてしまう。海の表面でも、やはり日の光はずっと当たってますので、壊れる作用が進んでいきます。さらに海岸にプラスチックが落ちていると、紫外線が当たるだけでなく、海岸の砂浜も熱をもちますので、それによってボロボロになる速さがどんどん加速されていくんです。ちなみに、1枚のレジ袋から、数千個のマイクロプラスチックができると言われています」

 洗濯バサミにしても、レジ袋にしても、ペットボトルにしても、長期間、紫外線に当たって、なおかつ高温にさらされるとボロボロになる。例えば、風に飛ばされたレジ袋がそのまま川に落ちて流れていったとしたら、そこからは数千個のマイクロプラスチックが発生しうるのだという。これまで考えたこともなかった。

 さらに、海に流れたプラスチックゴミを砂浜に集約して、効率的にボロボロにしてしまうような仕組みが自然界にある。

「海に浮いているゴミって、大きいうちは砂浜に打ち上げられる法則があるんです。そして、小さくなると、今度は沖合に出て行きます。専門的には、ストークスドリフトって言います。つまり、大きい破片が砂浜に打ち上げられて、そこでボロボロになって小さくなると、今度は海に戻っていくわけです。小さくなって海に行ってしまうともう回収するのはほとんど不可能です。プランクトンネットで海じゅうをすくわなければならなくなりますから」