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覚せい剤をはじめ、違法な薬物の事件報道が時おり世間を騒がせる一方で、薬物依存症は治療が必要な病気でもある。それはギャンブル依存症などでも変わらない。では、依存症はどんな病気で、どんな人がなりやすく、どうやって治すのだろうか。日本における薬物依存症の治療と研究のパイオニアである松本俊彦先生の研究室に行ってみた!(文=川端裕人、写真=内海裕之)

 日本では、覚せい剤の乱用が他の違法薬物と比べて高水準で推移し、なかなか減らない。検挙者ではなく、逮捕されていない乱用者を含んだ統計はないが(把握できていないのだから当然だ)、乱用者の数はおそらく数十万人におよぶのではないかという見積もりもある。違法ではないアルコールについては、明らかにそれでは済まないだろう。

 治療のことを書いた後で、では、治療をしなければどうなるのか、という点に触れておきたい。薬物依存という病気の転帰(行き着く先)は、知っておいた方がいいと思うのだ。

魂を殺す

「やっぱり依存症の人たちの死亡率はすごく高いです。中でも死因として、アルコールの場合には死因のトップ2は肝硬変と心不全です。3番目は自殺なんですね。他の薬物の場合は、アルコールほど体はボロボロにならないんですけど、やっぱり一番多いのは、事故だか自殺だかよくわからないパターン。もちろん自殺も多いですよ。他のメンタルヘルスの問題、うつ病なんかに比べても自殺が多い疾患だなと思っています」

「依存症の人たちの死亡率はすごく高い」と松本さんは言う。

 がんのように肉体的な部分が原因となって死に至るというよりも、心を病んで死に至る。薬物は魂を殺す病気をもたらす。

 しかし、ここまでいかずとも、依存症が放置されると社会的にひどいことになる。

「やっぱり行動がおかしくなってきますし、隠し事や嘘が多くなってくるし、本人も罪悪感があるから、使っちゃった日は家族にばれると思って帰らなくなったりするんですよ。家族からすると、やっぱり一番傷つくのは、嘘をつかれてること。何をしているかわからないっていうのは、一番不安だと思うんですよね」

 薬物依存は家族を引き裂く。友人関係を破綻させる。人の間で生きていくのが人間だとしたら、たしかにその部分が壊れてしまう。

薬物依存症が治療すべき病であることは間違いない。

 だから、やはり、家族・知人の中に、薬物依存になっている人がいたら、専門治療を受けられる医療機関になんとかつなげられるといい。精神にかかわる治療は、本人が治療を受けたいと思わなければまず成功しないというのだけれど、少なくとも、松本さんのSMARPPや、地域ごとに編集された別バージョンの治療プログラムは、今では、都道府県や政令指定都市の多くで、少なくとも1つの医療機関か精神保健福祉センターで受けることができる。医療機関では保険がきくし、精神保健福祉センターの場合にはその地域の住民であれば無料だ。

 一応、心配する人が多いと思うので、覚せい剤の依存症の人が、医療機関に行ったらそこで通報されないのか聞いた。