「それは先の錐体のレパートリーによって決まってきます。ヒトの場合、光の感受性の異なる3種類の錐体、L、M、Sがあります。波長がロング、ミドル、ショートという意味です。赤、緑、青と言ったりもします。3種類の視細胞、錐体細胞。言い換えると3種類のオプシンがあるわけですね。この3つのアウトプットの比率が色になるわけです。ヒトの場合は3種類ということで3色型といいます」

 専門的には、オプシンがどの波長に感受性があるかということで、L(ロング)、M(ミドル)、S(ショート)だが、さすがにこのままでは混乱するので、ここはちょっと妥協してL(赤)オプシン、M(緑)オプシン、S(青)オプシンなどと書くことにする。光の波長は色そのものではないと、力説した直後に申し訳ないが、ことヒトの視覚において、赤や緑や青をもたらすセンサーということで。

 そして、ヒト、多くの哺乳類、ミツバチ、多くの鳥類というカテゴリーで、錐体オプシンの多様性を示す図表を見せてもらった。ミツバチは脊椎動物ではないが、昆虫もやはりオプシンを使ってものを見ている。

錐体オプシンレパートリーの多様性。オプシンの種類ごとにカーブが描かれているので、存在するオプシンは多くのほ乳類、ミツバチ、多くの鳥類でそれぞれ2種類、3種類、4種類だ。なお、ミツバチのオプシンの感受性は全体に短波長側に寄っており、波長の長いほうからそれぞれ緑、青、紫外線の領域にあたる。(画像提供:河村正二)(Vorobyev, M. (2004). Ecology and evolution of primate colour vision. Clinical and Experimental Optometry, 87, 230-238のFigure 1を改変)

「まず、ヒトは、3色型色覚ですね。この3種類の組み合わせによって、数百万種類の色を見分けることができると。波長だけでなくて、明暗の情報も含めてですが。パソコンのモニタなどが、RGB(赤緑青)なのは、まさにそのためです」

 ところが、「多くの哺乳類」となると、M(緑)オプシンがなくて、L(赤)とS(青)だけだ。

イヌは「青と黄」

「2色型色覚といいます。霊長類以外の哺乳類ということで、イヌもネコもウシもこのタイプです。2つのセンサーの組み合わせで色をつくっているということで、よくイヌが白黒の世界を見ているというふうなことがいわれると思うんですけど、あれは間違いです。白黒ではないです。青と黄の世界と言ったほうがまだ近いです。2種類のセンサーだけで色をつくり出すので、色の種類数はぐっと落ちるわけですね」

 2種類のセンサーでも、それで光の波長を識別できるわけだから、それに応じた色の世界があるわけだ。白黒というのは単に明るいか暗いか、明暗の階調で表現しているものなので、根本的に異なる。

「実は、この2色型というのは、ヒトですといわゆる「赤緑色盲」に相当します。そして、こういうメガネがありまして、僕なんかは、プレゼンで見えにくい色使いをしないように確認するために使っているんですが──」

 河村さんが取り出したのは、特殊なフィルターを使ったサングラスのようなものだ。バリアントールと呼ばれていて、ヒトが擬似的に2色型色覚を体験するためのものだ。それを装着すると、パソコンの画面の色の様相がかなり変わってしまう。元もと赤だった部分が黒っぽくなって、緑が黄色っぽくなる。細かな色の識別が難しくなるが、やはり白黒というのとはまるでちがう。

「バリアントール」をかけると2色型色覚を擬似的に体験できる。