「この雪の結晶の観測データに加えて、既存のレーダーだったり、衛星のデータだったり、いろんなデータを複合的に組み合わせて、実態の解明をするというのがまず最初だと思います。その上で、予測の精度向上という意味では、モデルを精緻化して、雨か雪かをどのくらい予測できるのか、雪の性質も含めて予測できるのかを検証するという方向です」

 雪の結晶のデータが地理的な広がりも、時間的な連なりも持った観測として使えるなら、既存のリモートセンシングなどと組み合わせて、より精度の高い予測への突破口が開けるかもしれない。「低気圧レベル」の大気現象の中で最も予測し難いとも言われる「関東の雪」が、「普通の天気予報」になる日が近づく。

地理的な広がりも、時間的な連なりも持った雪の結晶のデータは、予報やリアルタイム情報の精度を向上させるカギとなるようだ。

 一方で、予報ではなくリアルタイムでの情報提供の可能性も見えている。

「今、レーダーが進歩しています。羽田と成田などの空港のレーダーが二重偏波レーダーというものになりました。今後、他のものもそうなっていくと思います。これは、縦方向に振動する電波と横方向に振動する電波(それぞれ、振動の方向が偏った偏波)を同時に送受信するタイプで、これを使うと、雨や雪が降っている時、その強さだけではなく、ある程度、形や種類まで判別できるんです。そのリファレンスデータとして、雪の結晶のデータが使えるんですね。二重偏波レーダーと雪の結晶のデータを合わせると、観測点がないところでも、雨なのか雪なのかみぞれなのか、もしくは雪だとしてもどんな形の雪なのか。そういう情報が分かる。それで、リアルタイムでどこで何が降っているかを情報提供できるようになるのは、かなり防災上重要だと思うんですね」

 このように市民科学としての「#関東雪結晶 プロジェクト」は、見事に市民に還元されるというシナリオでもある。

 荒木さんは、さらに、こんなふうに続けた。

「雪結晶のミクロな世界をスマホで手軽に覗けるということがわかれば、雪が降るのが待ち遠しくなると思うんです。すると、天気予報や気象情報をこれまでよりも入念にチェックするようになる。楽しむために気象に関する情報を自分から求めるようになるわけです。いつの間にか気象に関する防災情報を上手く活用することができるようになって、自分自身の身を守ることにも繋がりますよね」

 おーっ、と思った。

 楽しみながら知識を深め、知らず知らずに防災につながる。そういう話なのである!