小林ダイヤグラム。(荒木健太郎著『雲を愛する技術』(光文社新書)より)

 小林ダイヤグラムの横軸は温度で、16年11月の雪は、朝の段階で樹枝状結晶という、雪の成長環境としては比較的温かいマイナス10度からマイナス20度くらいの湿った空気の中で成長したものだと分かった。つまり、地上に落ちてきた雪の形を見るだけで、雪の結晶が成長した雲の中の気温や水蒸気量が分かるのである。

 それだけではない。時間経過まで明らかになる。

「その日、お昼、11時から12時くらいになってきますと、関東南部を中心に別のタイプの結晶、針状結晶などがでてきました。これは、さらに温度が高いマイナス4度からマイナス10度で、やはり湿った環境でできるものです。それと、雲粒が凍って付着した結晶も見られるようになります。雪の結晶が成長する雲の温度が上がって、かつ上空に、過冷却の水雲が存在するようになったということです」

雪の結晶フォトギャラリー 写真9点(画像クリックでギャラリーページへ)
左が樹枝状結晶で、右が針状結晶による雪片。(気象研究所「#関東雪結晶 プロジェクト」のサイトより)

 針状の結晶は、雪の結晶の成長環境としてはかなり高温多湿(と書くと暑そうだが、それでも当然氷点下)なところで成長するもの。そして、雪の結晶にもこもこした雲粒が凍ってくっついているのは、過冷却の水がある環境を落ちてきたから。雪の結晶を見るだけで、雲の中の様子がかなり見えてきた! 本当に「天からの手紙」とはよく言ったものだ。それも空間的な分布、そして時間的な変化を追えるとなるとかなり強力な観測手段になる。

 結局、この時の雪は、かなり温かく湿った環境で結晶が成長していたことが特徴だと言えそうだ。実は2016年から17年にかけての関東の雪は、最初の11月のものだけでなく、この傾向が強かった。それが関東の雪の「法則」なのだろうか。アメリカ東海岸では、むしろ低温型結晶が卓越することになっていたので、こちらでは別のことが起きているのかと疑問が湧いてくる。

関東の雪は、先に研究されているアメリカの事例とは異なる現象なのだろうか。